長期間賃料を払わない借家人を追い出したいのですが、明渡訴訟を起こす前に注意すべきこととは何ですか。
明渡の勝訴判決を得たとしても、それに基づいて強制執行ができるのは、被告になった者(賃借人)だけです。賃借人が建物の占有を他人に移転しないよう仮処分を申し立て、事件の相手方を固定する必要があります。
仮処分が有効と聞きましたが・・・。
明渡訴訟の提起にあたっては、将来の強制執行妨害を防止するため、しかるべき保全措置を講ずる必要があります。
どういうことかというと、例えば1年以上賃料を滞納しており、難なく明渡しの勝訴判決を得たとしても、その判決により強制執行ができるのは、裁判の相手方(被告)になった賃借人に対してだけです。
しかし、悪質な賃借人になると、このことを逆手に取り、訴訟の間に建物を第三者に転貸したり譲渡する(建物の占有を移転する)ことにより強制執行を免れようとします。
実際にこれをされると、賃借人に対する勝訴判決では当該第三者を追い出すことができず、改めてその者に対して明渡訴訟を起こさなければならなくなります。
このような事態を回避するためには、占有移転禁止の仮処分を申し立てることにより、明渡請求の相手方を賃借人に固定する必要があります。
仮処分にはお金がかかります。
賃借人が貸主に無断で第三者に占有を移転することを防止するという事柄の性質上、仮処分命令は、原則として、賃借人からの弁明を聴かずに出されます。
その代わりに、裁判所から一定程度の保証金を法務局に預けるよう求められます。この保証金は、貸主が明渡訴訟に敗れ、しかも賃借人が仮処分によって損害を被った場合の担保として要求されるもので、問題がなければ後日返還されます。保証金の具体的な金額は、賃借人が悪質かどうかといった事情にもよりますが、概ね賃料の1~3か月程度です。
しかし、一時的とはいえお金を預けることは賃貸人にとって不利益といえるでしょう。
弁護士に依頼すると・・・・・・
占有移転禁止の仮処分は、相手方の性質によっては不要と考えられる場合もあり、また保証金の問題もあるため、実際に行うか否かは、十分に協議のうえで決めていくこととなります。
仮処分は、訴訟とは別個の手続であり、相当の時間・労力を要するため、明渡事件自体とは別事件の扱いとなりますが、高木光春法律事務所では、明渡事件の弁護士費用等も考慮し、無理のない範囲で費用のご提示をさせていただきます。