1 10月下旬は、テレビで毎日野球中継が続いた。日本ではCMシリーズ、米国ではワールドシリーズ(WS)である。何年か前までは、日本シリーズは毎年見ていたが、WSはライブで見る機会はなかった。日本選手が中心選手としての活躍するようになったことで、WSも身近になった。
2 私の子供時代は、スポーツといえば野球、野球といえば巨人、王、長嶋の時代だった。
何しろ、テレビは巨人軍の試合しかやらない、だから否が応でも巨人が好きになる。
巨人は、日本シリーズ9連覇をしたのであるが、その間、米国のキャンプに行ってドジャース野球を学んでくるといった話がよく出ていた。要するに、米国の野球は、日本人のあこがれの対象でしかなかったのである。
3 秋になると、2年に1回くらいの割合でメジャーリーグの選手が日本にやってきて日本のチームと試合をする。こちらは、ライバルとして米国チームを見ていたが、彼らはせいぜい観光旅行の一環として家族連れでやってきて日本人に野球の手ほどきでもしてやろうか程度の意識であったように思う。
4 それが、今では、日本人選手がどんどんMLBに入り、しかもWBCといった野球のいわばオリンピックで日本が優勝などするものだから、何か日本野球はMLBに肩を並べるレベルになったくらいの勢いだ。
5 話は戻るが、今回、日米の野球を見ていて気付いたことがある。WSが行われたドジャースタジアムでプレー中、観客がホームランボールではないのにフェンスの中に手をいれてグラブでボールを捕ってしまった。また、ヤンキースタジアムでは、敵チームの外野手がフェンス越しにファウルボールを捕ろうとしたら、腕を引っぱって捕球を妨害した。
こんなことは、日本の球場ではありえない。なぜなら、グラウンドと観客席がはっきりと物理的に区分けされ、観客がプレー中のボールに触れないようにできているからだ。ある意味では、日本の観客は管理されているといっていいかもしれない(もっとも、札幌のエスコンフィールドなら日本の観客でもこんな妨害ができるかもしれないが、日本人はやらないのではないだろうか)。
何が言いたいかといえば、同じ野球というスポーツでも、日本人は選手と観客は別物(他のエンタメでも同じ)と考えているのに対し、米国では同じボールあるいは野球をめぐって同じ目線で参加するという意識が強いのではないかと思うのである。もちろん、ルールがあるから観客は普段おとなしくプレーを見ているが、参加できる機会があれば手を出してしまうということになるのではないか。選手と観客の距離感が違うのである。