現在の法律では、夫婦が離婚した場合、父母のいずれかが子の親権者となる単独親権の制度が採られている。しかし、最近国会を通った改正法では、共同親権が原則となり2年後に施行される予定だ。実は、この共同親権の制度は、すこぶる評判が悪い。
そもそも親権とは何か。親の権利だから、子の意思に反してでも一方的に押しつけることができるということではなさそうである。子にも年齢相応に意見表明権があるというのが世界のルールである。だから、まずは子の考えが尊重されるべきだが、実際はそうなっていない。これ自体が問題だ。そのため、今回の法改正では、父母が子に対して負う責務を明確化する提案もなされている。
本題に戻そう。共同親権が認められると、①進学先の選択や引っ越し、土地の処分といった重要な財産行為は父母が決め②緊急の手術、人工妊娠中絶や入学手続、あるいはDV、虐待被害が予想されるといった急迫の事情がある場合③食事などの身の回りの世話や習い事、高校生のアルバイトなど日常の行為は片親が単独で決めることができるとされている。これらの共同親権のルールは、離婚後のみならず、婚姻中の親権行使にも適用される。
婚姻中DVや虐待があり、やっとの思いで離婚にはこぎつけたものの、共同親権を盾に取られ、本来は単独でできるはずの②や③の行為もできなくなってしまう危険があるかも知れない。やむを得ず、裁判所に申立をすることになるが、裁判所を利用することには様々なハードルがある。これでは、何のために離婚したのかわからないといったことになる懸念があるし、親の紛争が長引けば子の福祉にも様々な影響が出るため、共同親権制度はいかがなものかということになる。
いずれにしても、いかに世界の趨勢とはいえ、共同親権が我が国に根付くまでには相当時間がかかりそうである。