弁護士ブログ/戒名について

皆様は、戒名(かいみょう)をご存知だろうか。仏教の各宗派において、故人に対して与えられる名前のことである。

戒名には、故人の俗名の一部が使われ、その人となりや業績などが反映されることが多い。

昔は、久家や武士など権力や財力を有し、寺院に多額の寄付(布施)をした者の恩に報いるために、院号居士(いんこじ、男性の場合)、院大姉(いんたいし、女性の場合)といった院号のついた戒名が与えられたようである。つまり、寺院からスポンサーに対する感謝状という意味合いが強かったようである。

しかし、バブルの時期を中心に檀家の方でも自分の財力を社会的に誇示したいという心理が生じたこと、寺院側でも葬式以外まとまった収入がなく経済的安定を得る必要が高まったことから、少しでも格式の高い戒名を授かろうという檀家の意向と寺院の利害が合致し、高額な戒名料が生じた訳である。しかし、昨今の経済事情からすると、従来の戒名料を維持することが合理的であるかは疑問がある。

戒名料はどの位か。一概には言えないが、格の高い戒名を望めば戒名料は高くなる。「格」を決めるのは寺院側か檀家側か?今までは、主導権は寺院側にあったというのが一般的ではなかろうか。

寺院に檀家が戒名を授かり、対価である戒名料を支払うのは、戒名をつけるという結果に着目すれば、法律上は、檀家を注文主、寺院を請負人とする請負契約(民法632条)と考えられる。契約であるから、檀家が契約締結を強制されることはないし、高いと思えば値引きを要求しても構わない。拒否することも自由である。理屈上はそうだが、これまでは、寺院の希望する金額を断れないというのが実情ではなかったか。

しかし、墓じまいなどといって墓自体の存続すら危ぶまれている今の時代、戒名についても檀家の主体的意思が尊重される時代に入ってきているように思われる。従来の相場にこだわらず、リーズナブルな金額にとどめるのも一考である。

 


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