引き続き、発信者情報開示請求に関してのお話です。
前回は外国会社の登記についてお話しましたが、今月は、改正プロバイダ責任制限法の施行がありました。
改正点はいくつかありますが、本改正によりまた、発信者情報開示請求の簡易化が図られたので、主な改正点についてご紹介します。
1 新たな裁判手続
前回ご紹介した2段階の情報開示請求の他に、一度の裁判で本人の特定まで可能な裁判手続が作られました。
これにより、当然書込みをした人の特定までの時間が早くなることが期待されます。また、裁判所の最終判断が出る前にすべての関係事業者が明らかになるので、開示手続をしているうちに必要な情報が消されてしまう可能性が大きく減少しました。
一方、これまでの手続も据え置きされています。たとえば、管理者の情報を公表していないものの、裁判なしで書込みがされた際のIPアドレスやタイムスタンプを開示するようなウェブサイトもあり、このようなウェブサイトについてはサイト管理者を特定するよりも任意開示を受けて従来型の請求を行った方が手っ取り早い可能性も考えられます。
2 開示請求の範囲の見直し
SNSを使う場合、メールアドレスとパスワードでアカウントにログインすることが一般的です。しかしながら、これまでのプロバイダ責任制限法では、書込みの際のIPアドレス等を開示することになっており、ログイン時のIPアドレス等の開示は条文上定められていませんでした。一部の事業者ではログイン時のIPアドレス等のみしか保管しておらず、制度の不備として指摘されていました。
このため、今回の改正で、名誉毀損等に当たるような書込みがなされた場合、書込み時のIPアドレス等だけでなく、ログイン時のIPアドレス等についても開示請求の対象となることが明記されることになりました。
この他にも細かな改正がありますが、全体として開示請求が早く、請求者の負担が軽くなるように改正がなされています。
また、今回の改正による裁判手続は、令和4年9月以前の書込みに対しても使うことができますので、ぜひ活用していきたいところです。