先月23日、法務省から米twitter社等が外国会社の登記を申請したとの発表がありました[1]。グーグル社や、フェイスブック、インスタグラムを運営するメタ社なども手続きを行っており、今後名誉棄損などの情報開示請求が容易になります。
このあたりについて、ちょっと解説したいと思います。
1 情報開示請求の流れ
ツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどの名誉棄損的な書き込みについて情報開示請求する際は、最低2段階の手続きを踏む必要があります。
まずは、上記のツイッター社やメタ社の運営会社に対して、書き込みをした人がどこからアクセスしているのか、裁判所を通じた仮処分による開示請求を行います。これらの会社は通常、書き込んだ人の個人情報そのものは持っていませんが、それぞれの書き込みについて、どこの回線から、いつアクセスしてきたかの情報を持っているので、その情報を確保します。
次に、書き込みに使われた回線を管理している会社に対し、回線やアクセス日時を伝えて、改めて開示請求を行います。多くの場合、この会社が書き込みをした人とインターネットを使うためのプロパイダサービスの契約をしており、住所や氏名などが明らかになります。時々、最初に見つけた会社が別の会社に回線を貸していることがあり、この場合はさらに回線を借りている会社に問い合わせをかけて、書き込みをした人の住所や氏名を調べることになります。
2 これまでの障害
しかしながら、外国会社の登記がなされるまでは、この仕事が少々やっかいでした。
なにせ相手の本社は外国にあるのです。申立書を裁判所から外国に郵便で送るので、時間もかかりましたし、いちいち書面を英訳したものを添付する必要がありました。送り先や代表者についても、日本の会社であれば会社登記事項の証明書をつけるだけで済みますが、アメリカなどはそもそも会社の登記制度がありません。
本人の特定には、どこの回線から、いつアクセスしてきたかの情報が必要になりますが、実はこの情報、短い場合だと3カ月くらいで消してしまう会社もあります。急がなければいけないのに手間をかけさせられては、たまったものではありません。
3 会社登記の効果
そこで、外国会社の登記です。外国の会社が日本に登記をする場合、日本における代表者を指定する必要があります[2]。
この代表者のうち一人は、必ず日本に住所を持っている必要があり、しかも訴訟代理の権限を持っています。
つまり、今後は外国会社の登記事項の証明書を手に入れて、日本国内の代表者を宛先にして開示請求ができるようになったのです。
4 今後について
特に、利用者数の多いtwitterやインスタグラムが外国会社の登記に対応したのは、今後の開示請求のハードルを大きく下げることになります。
とはいえ、上記のとおり、開示請求の期限はなかなか厳しいので、対応に迷うことがあればとりあえず弁護士に相談してみるのがいいでしょう。
[1] 時事ドットコムニュース「米メタ、ツイッターも手続き 海外IT28企業が登記―法務省」2022年08月23日20時10分https://www.jiji.com/jc/article?k=2022082300922&g=eco
[2] 法務省:外国会社の登記を忘れていませんか?https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00275.html