今回は、介護施設に入所している、判断能力の乏しい方が医療行為を受ける場合、介護施設としては、医療行為の同意を誰に求めればよいかということについてお話しします。
1 医療行為の同意をするのは、本人か成年後見人か。
〈事例〉本人は、介護施設に入所していますが、身上看護に関しては長女が、財産管理に関しては弁護士が成年後見人となっています。ここで身上監護とは、本人を見守り、本人の心身の状況を常日頃から把握し、必要に応じてケアマネジャーらと連携し、介護契約を締結し、どの程度の介護を受けるかを決めることや、体調に異変があれば、適切な病院を探してその病院で診療を受けさせたり、入院させたり治療を受けさせたりする医療契約を本人を代理して締結することを言います。費用がかかる場合は、財産管理を行う後見人が支払います。
医療行為は、本人自身の身体や生命に関わることで、それを受けるか否かは、本人だけが決められる一身専属権で、自己決定権に関するものなので、原則として本人の同意が必要であり、判断能力に問題がある場合には、親族の同意で足りるというのが医療実務のようです。
2 本人の治療に関し、親族がいないからという理由で、施設長が医療機関から医療行為の同意を求められた場合、これに応じてよいか。
結論としては、応じるべきではありません。1で述べたとおり、医療行為を受けるかどうかは一身専属的なものですから、施設長と言えども同意権はありません。もちろん、入所してからの本人の健康状態について所持している関連資料は医療機関に提供し、協力することが妥当であると考えられます。