弁護士ブログ/自己責任論について

1 本来、責任とは、自由意志があって初めて成り立つものである。自由に基づく行動であるからこそ、非難され、責任が生じるはずである。つまり、自由と責任は密接不可分の関係にあるというのが、近代西欧の考え方である。

TVなどでよく見かける光景だが、我が国では、問題を起こした会社や組織のトップが色々な形で謝罪する。時には、土下座までする。

共通するのは、「あなた方のした行為は無責任だ」といった非難に対するお詫びだ。ここで、「無責任」というのは、自由意志に基づく責任という意味ではなく、組織や集団の中で与えられた役割を適切に果たしていないという意味で「無責任」と言っているようである。

2 また、我が国では、「自由人」とか「自由業」とかいう言葉が「組織や集団との関わりが薄い」という意味で使われているようである。

ちなみに、広辞苑によれば、「自由業とは、工場・会社などにおける労働と異なって、勤務時間その他の制約を受けない職業。作家・弁護士など。」とされる。私のような弁護士は、「自由業」の典型とされているようであるが、「自由だから責任があるのだ」と言って、どれだけの人が納得してくれるだろうか。不可解な自由業という言い方はできれば避けるべきではないか。

3 このように、我が国では、責任は、近代的な「自由に伴う責任」ではなく、「集団や組織内での役割に関する責任」という意味で使われていることに留意するべきである。

(以上は、神里達博著、「リスクの正体ー不安の時代を生き抜くために」岩波新書、を参考にさせていただいた。)

弁護士高木光春


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