実際に債務整理をしたいと思っても、どの弁護士に頼めばいいかわからないという人がほとんどかと思います。ここでは、私の思う弁護士の選び方の基準について触れさせていただきます。
まず、弁護士には強い分野と弱い分野というのが少なからず存在します。弁護士は幅広い業務範囲を有しているのでこれは当然なことです。例えば、この弁護士は医療訴訟に強いとか刑事事件には弱いとかいうものがあります。では、債務整理に関して強い弁護士を選べばいいのかと思われるかもしれませんが、弁護士にとって債務整理は日常茶飯事で舞い込む案件です。人によって大なり小なり取扱案件数に違いはあるかもしれませんが、債務整理ができないなんて弁護士はほぼいないと思って頂いて構いません。強いて言うならば、大手金融業者との訴訟に関わるような大型の案件を取り扱ったことある事務所がベターであると言えます。
次に、有名事務所のほうがいいのかという問題です。最近ですと債務整理に関して日本でも有数の某大手事務所が流しているCMを目にされる方も多いかと思います。もちろん大手事務所には多くの人材が揃っていますし、それだけ取扱の案件数が多くなるので実績もあります。しかしながら、大手の事務所はそれだけの案件をいっぺんに処理していかなければならず、手続としてはその人その人に合った解決策を探していくというよりは、その人の案件を自事務所の手続ラインに乗っけて処理をしていくような場合もあります。なのでぞんざいに扱われたと思われてしまう方も少なからずいるかもしれません。また、広告費にお金をかけている関係上、依頼費用も他事務所と比べて少々割高になる可能性があります。小さい事務所は小回りがききますし、大きい事務所はブランド力と実績を持っています。この辺は、一般企業ともさして変わりはないと思います。
以上が弁護士選びの基準や大小による違いですが、次に実際に依頼をする上で必ず確認できなければならないものを挙げます。
まず、料金体系が明確であることです。債務整理を行う人がその手続にいくらかかるかわからない事務所に依頼をしたいと思うはずありません。債務整理に関しては、明確な料金体系以外に成功報酬として案件を請け負う場合もありますので、そのあたりも意識して事務所を選んでください。
次に、相談後の連絡が迅速であることです。整理手続なんて早く終わるにこしたことはないわけですから相談を行った後に連絡をなかなかよこさないような事務所は依頼を取りやめするのが賢明かと思います。
債務整理の相談に関しては初回無料を謳っている事務所が多くあるので、色々な事務所を見るのもひとつの手かと思います。
債務整理を行える人間は基本的には3人だけになります。それは、弁護士・司法書士・自分のいずれかになります。まずは他人に依頼する場合を見てみましょう。
弁護士
弁護士は、示談や訴訟のプロです。ありとあらゆる交渉問題について幅広い知識を有すると共に、広い業務範囲をカバーしております。(無論、人によって強い分野・弱い分野は存在します。)よって、司法書士法が改正されるまでは、債務整理は弁護士の生業の業務でした。
司法書士
平成15年4月1日より施行された改正司法書士法の第3条により追加された司法書士の定義は「所定の研修を受け法務大臣の認定を得た上で簡易裁判所における民事訴訟・和解・支払督促等の手続につき依頼者を代理することなどを業とする者」と定められております。この所定の研修を受け法務大臣の認可を受けた司法書士を認定司法書士と呼びます。この簡易裁判所訴訟代理権の付与により、司法書士は訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件につき代理権を有します。つまり、債権者との訴訟価額が140万を超えない場合は、司法書士にも債務整理に関する代行業務を行えます。
弁護士と司法書士における債務整理の相違点は、140万円以上の過払い金があったかどうかが一番問題となるところです。簡易裁判所における訴訟額の限界は140万円です。つまり、認定司法書士では140万円を超えると訴訟手続ができなくなります。140万円を超えた場合は地方裁判所に訴えなければなりません。そうなると代理権を有しているのは、弁護士のみとなります。しかも日弁連法的サービス対策本部によれば、140万円以下か否かは債権者ごとに判断するのではなく,すべての債権者の総債権額で判断されるとされています。(日司連は1業者あたりの請求額が140万円以内としていますが、判例によれば日弁連の主張する説が有力です。)もちろん、請求額が140万円を超えるかなんて、債務者にはすぐにわかりません。よって相談するのであればまずは、弁護士に相談するのが適当でしょう。140万円を超えてくれば、地方裁判所の管轄となり貸金業者もいやでも弁護士に依頼を求めなければなりません。しかし、裁判は金も時間もかかるから起こしたくないと思うのが普通です。貸金業者も簡易裁判所での裁判はいくらでも行くが、地方裁判所になったら弱気になる業者も少なくありません。弁護士は仮に一人の債務者の請求金額が140万円に満たない場合でも、他の債務者と団体で訴訟したり、自らの弁護士費用を請求金額に乗せて140万円を超えるようにして示談を促すテクニックを使うことができます。
また、自己破産や民事再生は地方裁判所に申立てを行うことになります。もしこの業務を司法書士に依頼した場合、司法書士には地方裁判所にたつ権利はありませんので、書類作成の代行のみとなり申立ては自分自身で行うことになります。弁護士はこれらの手続にも代理人として出廷することが可能です。また、これらの手続には審尋と呼ばれる裁判官との口頭面談がある場合があります。この審尋が行われると債務者本人では答えられない質問が出てくる場合があります。やはりこの場面を見ても、弁護士に依頼をするのがベターといえるでしょう。
もちろん、司法書士における債務整理にメリットがないわけではありません。少額の訴訟であれば、弁護士よりも司法書士に依頼するほうが平均的に見れば費用を抑えられるケースが多いようです。
次に弁護士や司法書士に依頼せずに自ら債務整理を行う特定調停という手続があります。これは裁判所が選ぶ調停委員が債務者と債権者の言い分を聞きながら、話し合いで解決を目指す制度です。裁判所を使った任意整理の手法とも呼べるでしょう。この手続のメリットは、第一に貸金業者からの取立てが止まること、第二に利息制限法における引直し計算をすることができるため債務額が減額できることになります。この制度は平成12年2月17日より施行されている特定調停法により発足し、返済困難に陥っている多重債務者にとっては、それまでの民事調停よりも調停制度が格段に利用しやすくなっている為、現在では多重債務者の調停の大半は、特定調停で行われています。(2011年における特定調停の申立件数は、11,351件)
借金が多額になってしまったり、多重債務になってしまった場合は、返済が困難な状態になります。そのような場合は、債務整理のプロである弁護士や司法書士に一度相談すると良いでしょう。
債務整理イコール自己破産と捉えていて、世間体などを理由に債務整理を踏み出せないという人もいますが、問題を早めに弁護士や司法書士に相談することで自己破産以外の方法で債務整理ができる可能性があります。債務整理には、自己破産のほかに過払い金返還請求・任意整理・個人民事再生などがあります。
特定調停
裁判所に申し立てをして、調停により借金の返済方法や金額を決め直す方法で、弁護士や司法書士に依頼せずに自分で債務整理を行うときに利用します。
任意整理
裁判所を利用せず、貸金業者と直に交渉し、借金の減額や支払い条件の見直しをすることで、借金の返済を少し楽にする方法です。
個人民事再生
住宅ローン以外の債務を最高で10分の1まで減額することができ、その減額された借金を3年以内に返済することで残りは免除されるという制度です。
自己破産
裁判所が借金の返済が困難で支払い能力がないと認めた場合、全ての借金を免除してもらうことができる方法です。
保証人の責任はどのようなものですか?
友人が借金をする際、その保証人になりました。しかし、友人が借金を返さなかったようで、私に請求がきました。友人本人から取り立てるように言えるでしょうか。
保証には、単なる「保証」と「連帯保証」とがあります。質問のようなケースでは、単なる「保証」をしたのか、「連帯保証」をしたのかで取り得る対応が変わってきます。
単なる「保証」をしていた場合は、債務者本人である友人から取り立てる(催告)よう請求することができますし、友人本人に借金を返せる財産があり、且つその財産から借金を回収すること(執行)が容易であることを証明すれば、本人の財産から執行するよう求めることができます。これに対して、「連帯保証」をしていた場合は、保証人であっても債務者本人とほとんど同じ責任を負います。そのため、友人本人から取り立てるように請求することはできません。
保証と連帯保証とはどのように違うのか?
保証には単なる「保証」と「連帯保証」とがあり、法律上、効果や負うべき責任の範囲は、以下のように区別されています。
単なる保証の場合
「催告の抗弁権(まず本人に催告をするよう請求できる権利)」、「検索の抗弁権(本人に債務を弁済する財産があり且つ執行が容易であることを証明すれば、本人の財産から執行するよう求めることができる権利)」が認められています。
また、「分別の利益」が認められています。これは、保証人が複数人いる場合は、債務全額を保証人の頭数で割った金額の範囲で責任を負えばよいとする制度です(具体的には、200万円の借金に4人の保証人がいた場合、各保証人は、200万円÷4人=50万円の範囲で責任を負えば足ります。
連帯保証の場合
債務者本人が財産を持っていても、債権者から請求があれば連帯保証人が弁済しなければなりません(「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」が認められません)。
また、「分別の利益」が認められず、債務額全額の範囲の責任を負います(具体的には、200万円の借金に4人の連帯保証人がいた場合、4人の連帯保証人全員が200万円全額の範囲の責任を負い、債権者側からすると、債務者本人と、連帯保証人4人の計5人の最も回収しやすい人に請求できます)。
一般的に、保証を求める際は、「連帯保証」とすることが多く、不動産の賃貸借契約書や、金銭消費貸借契約書では、連帯保証とされるのが通常です。