- 離婚後の戸籍・姓について
- 財産分与について
- 未成年の子どもがいる場合の親権・監護権について
- 子どもの養育費について
- 子どもの面会交流について
- 慰謝料について
- 年金分割について
上記に述べたのが離婚するときに決めることです。
夫が筆頭者である戸籍に入っていた場合、離婚すると夫の戸籍から除籍されるため、子どもがいないのであれば、妻は離婚後に新しい戸籍を作るか、結婚前の親の戸籍に入るか選ぶことができます。
夫婦が婚姻中に築いた財産は、預貯金や現金・土地など夫婦どちらの名義になっていても関係なく共有財産となるので分け合うことができます。ただし婚姻中に負った借金などのマイナス財産も財産分与の対象になりますので注意が必要です。
子どもがいる場合は親権者を決めなくてはなりません。また子どもと共に生活をし、子どもの教育・身の回りの世話をするのが監護権になります。親権者と監護者が一緒とは限りません。幼児の場合は、子ども自身での判断ができないので、調停では子どもが心身とも健康に育つに相応しい環境を考慮して判断します。
養育費の算定になる基準は、父母双方の経済力・子どもの年齢・人数などにより金額を決めます。
近年、妻からの離婚調停申し立ての動機の中で、「配偶者からの暴力」は「精神的な虐待」を加えると最も多い数字であり、配偶者から繰り返し行われる暴力は離婚の原因の代表的なものです。
以前は夫婦間での暴力行為は「夫婦喧嘩」「家庭内のこと」として軽視されてきましたが、現在では「暴力はどんな形であれ、相手の尊厳を傷つけ、重大な人権侵害にあたる」として、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)」により、決して許されない行為であることが明示されています。
これは法律で定められている離婚事由の「婚姻を継続しがたい重大な事由」にもあたりドメスティックバイオレンス(DV)を理由に離婚することは可能です。
DVには、身体的な暴力だけではなく、言葉による侮辱や罵詈雑言を浴びせる精神的な暴力、生活費を渡さない、働くのを禁止する、支出を細かく監視する、おどしや暴力による性交渉の強要などの性的暴力なども含まれます。
弁護士はもちろん、警察や行政(各地にある「配偶者暴力相談支援センター」)で,随時相談を受け付けています。保護命令などの手続に必要となるので、警察ではDV相談であることを明らかにし、相談記録を作成してもらいましょう。
また、夫の暴力を防止するため裁判所に対してDV防止法に基づく保護命令を申し立てることがきでます。
保護命令には、接近禁止命令(6か月間、住居や職場に接近したり付近を徘徊することを禁止)、退去命令(2か月間住居から退去させ・接近を禁止),電話等禁止命令(面会の要求・電話・ファックス・メールの禁止)などがあります。
申立人の妻だけではなく、一緒に避難している子どもがいる場合に,子どもへの接近も禁止できます。
夫がこの保護命令に違反した場合は、犯罪(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)として処罰されます。
配偶者との同居が耐えられなくなり、別居を開始し離婚の要求をしたが、相手が全く離婚をする意思もなく、離婚事由もないため裁判離婚ができずに時間だけが経過しているというケースも多くあります。
そのような場合でも、別居期間が長期間に及ぶと、婚姻共同生活を回復する見込みがないものとみなされ、離婚が認められる場合があります。
別居の期間については、「夫婦が5年以上継続して共同生活をしていないこと」として挙げられています。これは破綻主義の立場から、夫婦の共同生活の不存在を結婚破綻の客観的かつ典型的なしるしとみて、それが5年以上継続した場合には、裁判上の離婚原因として認めるものです。
ただし、同居期間の長さ・別居に至った理由や子どもの有無(未成年の子どもがいるような場合)・経済的事情・別居後の状況・離婚請求する側の有責性の有無などさまざまな事情が考慮されて、2・3年程度のより短い期間でも性格の不一致のように、夫婦とも別居に至るにあたっての責任が同等な場合には離婚が認められることもあれば、8・9年程度のようなより長い期間別居していてもその間生活費を送金していなかった場合には離婚が認められないこともあります。
「法律上の離婚原因」のところでも説明しましたが、もう一度説明いたします。裁判離婚では下記に述べられている民法で定められる5つの離婚原因のいずれかに当てはまることが証明されないと離婚は認められません。
- 配偶者に不貞行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の音信がとだえて生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強の精神病にかかり回復の見込みがなく、夫婦としての関係を継続しがたい場合
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき又は①~④に当てはまらないものの、愛情も冷め夫婦生活が事実上破綻している場合
夫婦のどちらかが「離婚したい」と思っていても、相手方が「離婚したくない」という場合は、最終的には離婚訴訟の中で裁判所が離婚を認めるか、認めないかの判断をすることになります。その場合、上記に挙げた①~⑤の法律上の離婚原因のどれかに当てはまるのかどうかが検討され、当てはまれば離婚が認められ、どれにも当てはまらなければ「法律の離婚原因はない」ということになり離婚は認められません。
「セックスレス」は、⑤「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」という要件に当てはまるかどうか、ということを考えていくことになります。
法律に明文化されているわけではありませんが、夫婦には貞操義務があるとともに、夫婦間のセックスも義務とみなされています。だからといって、セックスレスでも夫婦間に愛情や信頼関係があり、互いに納得の上であれば問題はありません。
一方が理由もなく長期間にわたって性交渉を拒否しそれが原因で夫婦関係が破綻した場合は「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」の1つとして離婚が認められます。
また、性的不能の場合はそれが発生した時期や原因などが考慮されます。性的不能を隠していて結婚した場合は離婚が認められます。
セックスの拒否のほか、性の不一致も離婚の理由になることがあります。配偶者の性的嗜好が異常であったり、不本意な性交渉を強要され続けたりした場合などで婚姻を継続し難いときは離婚が認められることもあります。しかしそれを証明することが困難なのも事実です。
法の原則として「クリーン・ハンズ」があるため、浮気など夫婦関係が破綻する原因を作った妻あるいは夫を「有責配偶者」といいます。従来、裁判所は有責配偶者から離婚を求めることはできないという立場をとってきました。
有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められませんが、例外的に認められる場合もあります。例外的に有責配偶者からの離婚請求が認められるためには、下記の3つの条件を満たす必要があります。
- 別居期間が相当長期に及んでいる場合。(明確な期間の基準は無い)
- 未成熟(満20歳未満の子など)の子どもがいない場合。
- 離婚しても相手が精神的・経済的にきわめて過酷な状態におかれる恐れが無い場合。
長年にわたって別居生活が続き、夫婦としての実態が無く、婚姻関係が破綻していて修復が無理とみなされるのであれば、有責配偶者からの離婚も認めようという考え方に変わってきています。
昭和62年9月2日、最高裁の大法廷は、有責配偶者からの離婚請求であっても認めうる、という判例を生み出しました。これは判例変更であり、画期的判決となりました。その後の判例においては、「別居が相当の長期期間にあたる」と認定される別居期間も、少しずつ短くなってきています。