専業主婦ですが、財産分与はどうなりますか

以前は「夫が給与収入を得て、妻が専業主婦」という夫婦が非常に多く、財産の形成は夫がメインで妻の貢献度は低いと考えられていました。そのため妻の財産分与割合は20%程度とされてきました。
しかし近年では、男女平等の思考が高まり、妻の貢献度が見直されて、現在では財産分与割合は、原則として2分の1と考えられています。
これは、財産を築き維持できたのは妻の協力(家事労働・内助の功)があると考えられてきているからです。

[広島高等裁判所平成18年(ネ)第564号離婚等請求控訴事件平成19年4月17日(抜粋)]
夫婦が婚姻期間中に取得した財産は、夫婦の一方の所得活動のみによるものではなく、他方の家計管理や家事・育児等を含む夫婦共同生活のための活動の成果として得られたものというべきであるから、妻が専業主婦の場合の財産分与の判断においても、家事従事による寄与を正当に評価する必要がある。
本件においては、一審原告は、婚姻後、一審被告Bとの同居期間中、仕事に就いたことはないが、専業主婦として家事や育児に従事し、夫婦の共同生活の維持や一審被告Bの所得活動による財産形成に寄与してきたことが認められる。これらの事情のほか、扶養的要素も考慮すれば、財産分与割合は2分の1とするのが相当である。

財産分与って何ですか

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して得た財産(共有財産)を分け合うことをいいます。また、夫婦のどちらの所有か明確でない場合も共有財産とみなされます。他方、婚姻前から所有している財産や、婚姻中に相続や贈与により取得した財産などは、夫婦の一方が単独で所有する財産(特有財産)とされます。特有財産は財産分与には含まれません。

慰謝料を請求しない場合でも、夫婦で築いてきた財産があれば、離婚の原因に関係なく財産分与の請求ができます。どの財産をどのように分けるかについてや金額などは話し合いで決定しますが、財産分与は離婚するときに抱える問題の中でも揉めることが多く解決までに時間がかかることも多いです。
妻が専業主婦で夫の収入だけで生活し、預貯金・不動産などの名義が夫であっても、財産を築き維持できたのは妻の協力があったからとみなされ、実質的には財産は夫婦共有のものと考えられます。

財産分与には主となる「清算的財産分与」と「扶養的財産分与」の2つの要素があります。

清算的財産

共有財産をそれぞれの貢献度によって分け合うこと。

扶養的財産

離婚後、生活が不安定になる側にもう一方が生活費の援助をする財産分与のこと。(請求する側の生活状況を考慮して慰謝料とは別に加算される場合がある)

生活費(婚姻費用)はどのように決まりますか

婚姻費用の程度(金額)ついては、当事者間で自由に話し合い決めることができますが、一般的には家庭裁判所に対して婚姻費用分担を求める調停を申し立てて請求することになります。

家庭裁判所でも、話し合いで金額を決めるという前提になっていますが、ほとんどの場合は、家庭裁判所のホームページに掲載されている「婚姻費用算定表」を活用して話し合いを進め、婚姻費用の金額を決定しています。
子どもの人数や夫婦双方の収入によって,月々負担すべき金額の概算が表になっています。
この表でみると、例えば

夫の収入800万円 妻の収入0円 5歳の子がいる場合
妻は夫に、10~12万円を請求できる
夫の収入500万円 妻の収入200万円 15歳の子と13歳の子がいる場合
妻は夫に、8~10万円を請求できる

ということになります。

離婚するまでの生活費はどうすればよいですか

夫婦間には、夫婦の生活費と子どもの養育費(婚姻費用)を分担する義務があります。収入がない・あるいは収入が配偶者よりも少ないのに生活費を渡してくれない場合は婚姻費用を請求できます。また、婚姻費用は、たとえ別居していたとしても支払わなければならないので、支払ってくれない場合には相手に請求することができるのです。
通常の場合は、離婚するための調停や訴訟の申立と同時に、この婚姻費用の分担調停を申し立てることが多いです。また、離婚するか決めかねている場合も調停を申し立てることができます。

離婚調停を申し立てると、相手方が生活費の送金などを止めてくる場合があります。離婚が決まれば養育費や児童扶養手当などの公的な援助を受けられますが、離婚調停がなかなか進まなければ、その間の生活費がなくなってしまう場合があります。そのような事態を防ぐために、離婚調停の申し立てと同時に婚姻費用分担調停の申し立てを行います。
調停では、夫婦双方の資産や収支などの事情・源泉徴収票などの資料を提出し、家裁の算定表に基づいた助言を受けながら合意点を探します。調停でも話し合いがまとまらず、調停が不成立に終わると自動的に審判に移行し、裁判所が婚姻費用の金額を決定します。裁判所の調停や審判には時間がかかるので、お金がなく生活できないときは、審判の申し立てと同時に「審判前の保全処分」を申し立てましょう。裁判所の判断により、生活費の支払いを命じてもらえます。
このような手続きととれば、仮に離婚調停がまとまらなくても婚姻費用だけは支払ってもらうことができるのです。申し立てをせずに離婚調停の中でも婚姻費用を請求していくこともできますが、相手方が拒んだ場合、強制力をもって婚姻費用を支払ってもらえるのでメリットが大きいです。

離婚が既に成立していたら慰謝料は請求できませんか

離婚が既に成立していても、慰謝料の請求は可能です。
ただし、慰謝料請求は、3年で時効にかかってしまう(不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する、という民法724条の規定に基づきます)。ので、離婚が成立してから3年を経過してしまうと、原則として慰謝料を請求できません。

もし、時効完成間際であれば、時効の中断の手続などを採る必要があるので、是非お早めに弁護士にご相談下さい。

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