「不起訴」とは何ですか

不起訴処分とは検察官の事件処理のうち、公訴を定義しない処分のことです。訴訟条件を欠く場合や被疑事実が犯罪とならない場合、証拠が不十分又は不存在の場合、刑の免除事由がある場合、及び起訴猶予とすべき場合になされます。
起訴猶予とは、検察官の事件処理において、訴訟条件を満たし犯罪が立証できるにもかかわらず、訴追の必要がないとして不起訴にする処分です。犯人の性格・年齢・境遇・犯罪の軽重・情状・犯罪後の情況を総合考慮して決定されるものになります。日本では、明治時代からこの制度が実務慣行されていますが、近年ではこの裁量の幅を狭めるべきだという提案も多くなってきているようです。

「起訴」とは何ですか

起訴とは、刑事訴訟における公訴の提起のことです。検察官による捜査の結果、被疑者が間違いなく犯罪を起こしたと確信し、刑事処分が必要であると判断した場合、裁判所にて裁判を行う手続です。 日本では、公訴提起の権能を検察官だけに認めています。(起訴独占主義)これには、起訴・不起訴を公正かつ統一的に行うという利点がありますが、検察官の独善を招く危険もあるとされています。現行の刑事訴訟法は原則としてこの主義を採用していますが、準起訴手続や検察審査会制度を設けることで、その弊害の防止を図っています。

準起訴手続

公務員の職権濫用罪について検察官が、不起訴処分としたときに、公訴又は告発した者の請求により、裁判所が事件を審判に付するか否かを決定する手続。請求を受けた裁判所は審理を行い、事件を起訴すべきものと判断をするときは付審判の決定をする。

検察審査会

検察官の訴追権の運用に民意を反映させて、その適正化を図る為に作られた制度。衆議院議員の選挙権者から無作為に選定された11名の審査員が、検察官の不起訴処分の当否を審査する。不起訴不当・起訴相当の議決がなされると、検事正が事件の処理を再考する。起訴を強要しうるものではないが、訴追権運用の適正化に一定の影響を及ぼしているとされている。

起訴には、以下の2種類のパターンがあります。

「公判請求」

裁判所での裁判を求める起訴の方法のこと。

「略式請求」

正式な公判を開かず書面審理だけで刑を言い渡す簡易な刑事裁判手続。簡易裁判所が50万円以下の罰金又は科料を言い渡す場合かつ、被疑者が略式手続によることに異議がない場合に、起訴と同時に検察官の請求によって行われるもの。

起訴にあたり、検察官は起訴状を裁判所に提出します。起訴状には裁判所に対して、審判の対象を特定して提示し、被告人対して、攻撃の内容を告知して防御権の行使を全うさせてさせる機能を持ちます。 起訴状には、氏名その他被告人を特定するに足りる事項、公訴事実、罪名の記載が法律で義務付けられています。公訴事実は、訴因を明示して記載されます。訴因については、訴訟物の設定である為可能な限り罪となるべき事実を特定していなければならない。特定が不十分な場合には、検察官に釈明が求められ、それでも不十分な場合には、無効として公訴は、棄却されます。

取り調べはどのように進みますか

普通の事件であれば警察による本格的な取調べは、被疑者が逮捕された翌日より始まります。(無論、事件の種類や被疑者自身が容疑内容を事前に認めているかいないか等で変わる場合もあります。) 取調べにおいて、最初に共通して必ず行われることは被疑者の権利の告知です。
権利の告知には、以下のようなものがあります。

黙秘権

憲法第38条1項にて保障されている、自己に不利益な供述を強要されない権利。ここで言われる不利益とは、刑事責任を問われることや加重されるようなことをいい、民事上の責任に関わるものは含まれません。強要には、拷問のような直接的手段のみならず、過料や刑罰等による間接的手段も含まれます。
黙秘権の効果として、供述しないということ自体から有罪その他不利益な心証をとることは禁止されています。

署名押印拒否権

刑事訴訟法第198条第4及び5項にて保障されている。供述調書作成の場面にて、警察は被疑者に対して供述調書に誤りがないかを確認させ、その上で署名に押印を求めますが、被疑者が内容を認めない場合、あるいは内容に一部違いがあるような場合は押印を拒否することが出来る権利。内容の訂正を求めることもできる。(増減変更申立権)

権利告知の後に、本格的な取調べは始まります。日本の刑事事件において、被疑者の供述(自白)が最も有効な証拠となっていますので、捜査官も厳しく追及していきます。前述の黙秘権があるため、答えたくない質問にはもちろん答える必要はありませんが、捜査官も事件に関係のない雑談等から何とか会話をスタートさせ、そこから事件内容に切り込んでいこうとします。黙秘権を行使するのは意外と大変なようです。
黙秘権を行使することなく、警察の捜査官の取調べを受けると、捜査官はメモ等を取りながら、被疑者に証拠を見せる等して事件内容を確認していきます。取調べが一区切りつくと捜査官は供述調書の作成に取り掛かります。作成された調書の内容に異存がなければ、全てのページに拇印を押し、最後のページに署名することになります。内容に不満がある場合は、捜査官に書き直しを要求することができます。よく、内容に少々不満があっても署名や拇印を押してしまいがちのようですが、取調べでの調書は自分の未来がかかったものとなりますので絶対に妥協してはいけません。

捜査にはどのような方法がありますか

捜査には、強制捜査と任意捜査があります。

強制捜査とは、逮捕・勾留・押収・捜索・検証等を対象となる者の意思に反して行うことの出来る処分です。強制捜査は、被疑者あるいはその他関係のある人々の権利を抑制するものとなるので、司法的抑制の対象となります。したがって、強制捜査は現行犯である場合以外は令状によるのを原則とし、その他特に刑事訴訟法に定めた場合以外は認められません。
任意捜査とは、強制処分を用いない捜査一般のことを言い、聞き込み・尾行等があり、捜査の目的を達成する為に必要な限りで、広く許されている。

また、捜査の流れは以下のとおりです。

犯罪の発生

110番通報や被害届の受理等で警察が事件の発生を知ると、捜査に着手することになります。

捜査の開始

警察は、被害者や事件関係者から事情聴取等をし、被害届・調書を作成し、証拠品の収集・提出、実況見分を行い、犯行の立証・犯人の特定に移ります。被疑者の権利を抑圧するような捜査の場合には、前述した強制捜査による手続を取り、証拠の確保・犯人の逮捕を行います。

検察庁への送致

警察は、捜査をして集まった資料を全て検察庁に提出します。
検察庁は二次的捜査機関であり、検察官が送られてきた証拠を充分に検討し、被疑者や事件関係者から話を聞きます。
検察官はこれら全てに鑑みて、最終的に起訴処分するか不起訴処分するかの判断を下し、捜査は一旦の終了を迎えます。

逮捕されたら必ず裁判になりますか

逮捕されると、必ずしも裁判になるわけではありません。
検察官の判断によって起訴処分となった場合は裁判となるケースがありますが、検察官の事件処理で不起訴処分となった場合は裁判は行われません。不起訴処分は、被疑事実が犯罪とならない場合や証拠不十分又は証拠不存在の場合、刑の免除に値する理由がある場合、起訴猶予とすべき場合になされる決定です。また、判例では同一の犯罪について、被告人を二重に刑事手続に課すことを禁じていますが、一度不起訴になった事件について、後日起訴することはこの判例には違反しません。
また、正式な公判を開かず書面審理だけで刑を言い渡す簡易な刑事裁判手続があります。これを略式手続といい、簡易裁判所が50万円以下の罰金又は科料を言い渡す場合かつ、被疑者が略式手続によることに異議がない場合に、起訴と同時に検察官の請求によって行われるものです。

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