家裁送致って何ですか

成年が犯した事件であっても、少年事件であっても警察による逮捕から検察による勾留に至るまでの流れはさほど変わりません。(検察官による観護措置請求が行われる場合はこの限りではありません。観護措置に関しては後述します。)しかしその後、少年事件に関しては家裁送致という手続が取られます。これは、捜査書類と少年の身柄を家庭裁判所に預けるものです。(在宅事件の場合は、捜査書類のみが送られることになります。)家裁送致を受けた場合は、24時間以内に家庭裁判所の裁判官が面談を行い、引き続き調査をする必要があると判断すれば、少年の身柄を保全する為に少年鑑別所に収容する観護措置という手続が行われます。次に、家庭裁判所の調査官による調査が行われます。調査官は法律のスペシャリストというよりは社会学・心理学等のスペシャリストであり、少年の生活環境や交友関係、家庭内での内情等を調べ裁判官に報告します。

子どもが逮捕されました!これからどうなりますか

子どもが逮捕された際の事件処理は基本的には、勾留中は成人の被疑者と同様の捜査が行われますが、その後は家庭裁判所に送致され、調査を経て、少年審判を受けることになります。少年審判では、非行事実の有無やその内容、要保護性の程度により、不処分・保護観察・少年院送致等の保護処分もしくは検察官送致の決定処分が下されることになります。

少年審判の対象となる少年の分類

犯罪少年

14歳以上20歳未満で刑罰法令に抵触する行為をした少年

触法少年

14歳未満で刑罰法令に抵触する行為をした少年

ぐ犯少年

特定の事由があり、さらにその性格または環境に照らし、将来刑罰法規に触れる行為をするおそれがある少年。特定の事由とは以下のようなものを指します。

  • 保護者の正当な監護に服しない
  • 正当な理由がなく家庭に寄り付かない
  • 犯罪性のある人もしくは不道徳な人と交際し、またはいかがわしい場所に出入りしている
  • 自己又は他人の特性を害する行為をする性癖がある

それぞれで、事件処理の体系が異なる場面があります。こちらについては後述します。

逮捕から捜査に至るまで

犯罪少年の場合、逮捕・勾留の手続や期間については、成人と同様に刑事訴訟法及び刑事訴訟規則が適用されます。よって刑事訴訟法第203条及び205条により、警察は逮捕した被疑者を逮捕から48時間以内に検察官に送致しなければならず、その後24時間以内に勾留の裁判を受けて勾留されない限り釈放しなければなりません。勾留が決定されれば、延長請求された場合最大20日間身体拘束されます。
触法少年の場合は刑法第41条により刑事責任能力がないため、逮捕・勾留はできません。しかし一時保護されることがあります。警察は事件を調査した上で、児童相談所に通告ないし送致をします。児童相談所所長は、通告ないし送致を受けた少年について児童福祉法上の措置を行うか家庭裁判所に送致します。12歳以上の少年の場合には審判の結果、少年院に送致されることもあります。
ぐ犯少年も、まだ罪を犯すに至っていないので、逮捕・勾留はできません。

家庭裁判所への送致

司法警察員は、少年の被疑事件について捜査をした結果、罰金以下の刑に当たる犯罪の嫌疑あるものと思われるときは家庭裁判所に送致しなければなりません。また検察官は、少年の被疑事件について捜査をした結果、犯罪の嫌疑ありと判断した際に家庭裁判所に送致をしなければなりません。このように、捜査機関が捜査を行った上で犯罪を行った事実の疑いがある場合は、少年事件の場合全てが家庭裁判所へ送致されることになります。これを全件送致主義と呼びます。
送致の方法は、逮捕・勾留されている場合は通常、捜査記録と共に身柄つきで家庭裁判所に送致されます。逮捕・勾留がされずに在宅で捜査が行われた場合には、書類送致の方法で家庭裁判所へ送致がなされます。捜査をした少年事件について、その事件が極めて軽微であり、犯罪の原因及び動機・少年の性格・行状・家庭の状況及び環境等から見て再犯のおそれがなく、刑事処分や保護処分を必要としないと明らかに認められて、検察官又は家庭裁判所からあらかじめ指定された事件については簡易送致がなされることがあります。

家庭裁判所送致後の手続

観護措置

警察官及び検察官は、事件を家庭裁判所に送致する際に、少年鑑別所における心身鑑別を要するかどうかの意見を付します。家庭裁判所は身柄付で少年が送致された場合に、その日のうちに観護措置審問を行い、観護措置に付すかどうかを決定します。在宅のまま家庭裁判所に送致された場合であっても、家庭裁判所が必要と認めたときは、観護措置決定を行い、少年鑑別所に送致することもあります。観護措置とは、家庭裁判所に送致された少年の身体を保全することで、審判までの間に、少年の逃亡による調査・審判が出来なくなることの防止の為の制度です。観護措置の要件として、少年法では「審判を行う必要があるとき」としか定めておりません。(少年法第17条第1項)しかし解釈上は、非行事実の存在を疑うに相当な理由がある場合や身体を保全する必要性などが要件として挙げられます。観護措置の決定は家庭裁判所への送致後、24時間以内になされなければなりません。

少年鑑別所

少年鑑別所とは、観護措置がとられた少年を収容し、行動観察や資質鑑別を行う国の施設です。法務省の矯正局が管轄しています。少年鑑別所の職員は、少年院と同じ法務教官です。少年鑑別所では、収容中の行動観察や身体測定・知能テスト・心理テスト等様々な手法を用いて少年の特性に合わせた方法で鑑別を行います。少年鑑別所は、行動観察や資質鑑別の結果をまとめ、保護処分やその後の処遇に関する意見を記載した鑑別結果通知書を審判前に家庭裁判所に提出します。

審判不開始決定

実際には少ないケースですが、調査の結果、審判を開始する必要がない場合には、審判開始決定を取り消して、審判不開始の決定をすることが出来ます。

家庭裁判所の調査官による調査

家庭裁判所の調査官は、裁判官の調査命令を受けて、少年の用保護性を判断する為の社会調査を行います。具体的には、保護者・学校・児童相談所・保護観察所等関係機関に照会を行ったり、少年本人やその保護者と面談するなどの方法で調査を行います。家庭裁判所調査官は、裁判官のような法曹ではなく心理学や社会学・教育学に精通した人が多いです。家庭裁判所調査官は、社会調査の結果を調査票にまとめて、裁判官に提出し報告します。調査票には、調査官本人の処遇に関する意見も付されています。調査票完成前にも調査官は口頭で適宜裁判官に報告をし、処遇に関する意見を述べなければなりません。

少年審判の方法及び終局決定

少年審判は、懇切として和やかに、少年に自己の非行について内省を促すよう、非公開で行われます。(少年法第22条)非公開ということで一般の公判と違い、傍聴はできません。これは少年の矯正や社会復帰の為にプライバシー保護の観点から行われています。審判の流れは、通常以下のようになります。

  • 少年・保護者の人定質問
  • 黙秘権の告知
  • 非行事実の告知
  • 非行事実に対する少年の陳述
  • 非行事実に対する付添人の陳述
  • 非行事実の審理
  • 要保護性に関する審理
  • 調査官・付添人の処遇意見の陳述
  • 少年の意見陳述
  • 決定の告知

終局決定については以下のものがあげられます。

審判不開始決定

前述した、調査の結果、審判を開始する必要がない場合には、審判開始決定を取り消して、審判不開始の決定をすること。

不処分決定

処分をしなくとも調査・審判等における様々な教育的働きかけにより少年に再非行のおそれがないと認められた場合に少年を処分しないことすること。

保護処分決定

非行少年に対して、刑罰を避けて非行深度に応じた健全育成のための処遇を施す決定。以下のようなものがある。

保護観察処分

少年が非行を起こした事実は認められるが、少年を矯正施設に収容せずに、社会内で、適当な指導者の補導援護と指導監督の下に自発的な改善更正・社会復帰を促進する措置。

少年院送致

再犯する可能性や一般社会での更正が難しい場合に少年院に収容する措置のこと。少年の年齢・非行深度・心身の状況により、初等少年院・中等少年院・特別少年院・医療少年院の4箇所に振り分けられます。

児童自立支援施設送致

不良行為をし又はおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由で生活指導を必要とする少年を入所・通所させて、その自立を支援することを目的とする措置。

児童養護施設送致

環境上養護を要する児童を入所させこれを養護することを目的とする処分。

検察官送致決定

子どもの年齢やその他事情によっては、少年審判において刑事処分相当と判断される場合があります。その場合になされるのが検察官送致です。これがなされると、起訴されて通常の刑事裁判の手続を受けることになります。検察官送致されるのは以下のケースです。

  • 禁錮以上の当たる罪の事件について、事案の内容や子どもの年齢その他の事情を考慮して、家庭裁判所の裁判官が、当該少年については保護処分ではなく刑事処分が相当とする場合。
  • 家庭裁判所送致後、少年審判までの間に、子どもが20歳の誕生日を迎えて成人してしまった場合

刑事処分相当の判断基準は、少年法第20条第1項によれば、「罪質及び情状に照らして刑事処分相当と認めるとき」と記載されています。どのようなときに認められるのかは、判例によれば保護処分による矯正の見込みがない場合や保護処分による矯正の可能性があっても、事案の内容や事件が社会に与える影響を考慮した上で、保護処分に付するに相当でない場合としています。

判決に納得がいかないのですが

裁判に対して不服・納得のいかない場合、不服申し立てつまり上訴が設けられています。
第一審の裁判所が下した判決に対して,その裁判所のすぐ上の上級裁判所に不服を申し立てることを控訴と言います。また、控訴審で下された判決に対して不服がある場合にはさらに上告によって不服を申し立てることができます。
第一審の裁判所が簡易裁判所であれば、地方裁判所に控訴し、高等裁判所に上告することとなります。地方裁判所であれば、高等裁判所に控訴し、最高裁判所に上告することとなります。

控訴

控訴権は原則として、第一審の判決により不利益を受けた当事者に生ずるものになります。この不利益というのは、第一審における申立ての全部又は一部が排斥された状態のことを指します。当事者でない場合の不利益に関しては、原則として控訴は棄却されるものとなります。
更に、刑事訴訟法においては控訴の要件が更に限定的なものとなり、以下のものになります。

  • 1.法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
  • 2.法令により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
  • 3.審判の公開に関する規定に違反したこと。
  • 4.不法に管轄又は管轄違を認めたこと。
  • 5.不法に、公訴を受理し、又はこれを棄却したこと。
  • 6.審判の請求を受けた事件について判決をせず、又は審判の請求を受けない事件について判決をしたこと。
  • 7.判決に理由を附せず、又は理由にくいちがいがあること。
  • 8.刑事訴訟法377条、378条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があってその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであること。
  • 9.法令の適用に誤りがあってその誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであること。
  • 10.刑の量刑が不当であること。
  • 11.事実の誤認があってその誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであること。
  • 12.再審の請求ができる場合に当たる事由があること。
  • 13.判決があった後に刑の廃止もしくは変更または大赦があったこと。

(刑事訴訟法第377条~383条より)

上告

刑事訴訟法における、上告とは高等裁判所がした判決に対する上訴であり、ほとんどが控訴審判決に対する上訴となります。
これは最高裁判所が管轄するものであり、憲法違反又は判例違反を理由とする場合にのみ、権利として申し立てることができます。(刑事訴訟法405条)
ただし、上記の理由がない場合であっても最高裁判所の職権による原判決破棄の権限が認められていること(刑事訴訟法411条)から、実際に現場においては、この職権破棄を期待した上告申立てが多くなっています。
また、上告棄却とは上告人が主張する上告理由がないとして、上告を排斥する裁判になります。その他上告棄却する場合は以下のケースです。

  • 1.原判決に上告人の主張する上告理由があっても、他の理由によって原判決が正当と認められる場合。
  • 2.刑事訴訟において、上告の申立てが法令上の方式に違反したとき、又は上告権消滅後にされたとき。
  • 3.上告の申立て理由が明らかに刑事訴訟法第405条の法定理由に該当しないとき。

つまり、前述させて頂いた職権破棄を期待して上告することが多いということは、決定で上告が棄却される例が多いということに繋がります。

控訴審の流れは?

控訴が認められるためには、控訴審が紛争の内容について判断するために必要な要件(控訴の用件)を満たさなければなりません。この控訴の用件で重要なものは、控訴期間控訴の利益といえます。

控訴期間

控訴するか否かは、第一審の判決書の送達を受けてから14日間以内で判断しなければならない

控訴の利益

裁判で申し立てた(請求の趣旨)と第一審の判決の主文とを比較して、判決の主文が請求の趣旨に満たなければならない

上記を踏まえたうえで控訴した場合

民事訴訟の場合、控訴状提出から50日以内に控訴理由書を提出すべきことが定められています。控訴理由書を提出する他、控訴審で新たに証拠を提出することができます。これに対し被控訴人からは控訴答弁書等が提出され、控訴審で口頭弁論期日が開かれます。審理が終わると判決が言い渡されます。(和解協議が行われる場合もある)

刑事訴訟においては控訴期間内に、控訴審を担当する裁判所宛の控訴申立書を第一審の裁判所に提出して控訴の提起をし、さらに控訴申立人は、提出期限までに控訴趣意書を提出しなければなりません。

控訴するか否かの判断

刑事事件において控訴するということは、決して自分に有利な判決を得られる可能性があるというメリットだけではありません。
控訴をするということは、裁判を長引かせるということと同義です。その為、拘置所における勾留期間が長引く可能性が出てきます。そのため、更に拘置所に勾留されることになります。(未決拘留日数のうち,一部が刑に算入されますが、全ての日数にはなりません。)
また、検察側が控訴することで第一審の判決を超える量刑が課されることはありません。これを不利益変更禁止と言います。

刑の種類を知りたい

歴史的・世界的に刑罰は、剥奪の対象とされる犯罪者の法益の種類に応じて以下のようなものがあります。

  • 生命刑(人の生命を奪う刑罰)
  • 身体刑(人の身体を侵害する刑罰)
  • 自由刑(人の身体の自由を奪う刑罰)
  • 財産刑(人の財産を奪う刑罰)
  • 名誉刑(人の名誉を奪う刑罰)

わが国の現行刑法では、生命刑としての死刑、自由刑としての懲役・禁錮・拘留、財産刑としての罰金・科料・没収のみ認められています。これらはさらに主刑と付加刑に区別され、主刑は重い順に死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料があり、付加刑は主刑の言い渡しがある場合に限り、主刑に付加して科しうる刑罰で、没収だけが認められています。
死刑は文字通り、被告の生命をもって償うものであり日本では刑事施設内での絞首によるものとなります。
懲役刑は、監獄に拘置して所定の作業(刑務作業)に服させる有期懲役と無期懲役があります。有期懲役は1月以上15年以下が基本ですが、加重するときは20年まで、減軽するときは1月未満にすることが出来ます。無期懲役は、終身の期間にわたる懲役刑で拘禁の期間を定めずに言い渡されるものです。ただし、10年経過後、「改悛の状」(①悔悟の情が認められ②更生意欲があり③再犯のおそれがなく④社会感情が仮釈放を是正しているがある状態のこと)があるときは、行政官庁の処分をもって仮出獄を許されることがあります。
禁固刑とは、監獄に拘置されることと有期・無期(有期の場合の期間も同じ)があることは懲役刑と変わりませんが、懲役刑と異なり刑務作業に科されません。(受刑者が作業をしたいと言えば従事することは許されています。)
罰金刑は、最低金額が1万円以上とされています。また減軽する場合には1万円以下に下げられる場合もあります。もし、受刑者が罰金を完納できない場合には、1日以上2年以下労役場に留置されることになります。
拘留とは、1日以上30日未満の期間、拘留場(通常は警察留置所)に拘置する刑のことで刑務作業は科されません。
科料とは、1000円以上1万円未満の支払いを命じられる刑のことで、これも完納できない場合は、1日以上30日以下の期間労役所に留置されます。

どのくらいの刑になるか知りたい

歴史的・世界的に刑罰は、剥奪の対象とされる犯罪者の法益の種類に応じて以下のようなものがあります。

  • 生命刑(人の生命を奪う刑罰)
  • 身体刑(人の身体を侵害する刑罰)
  • 自由刑(人の身体の自由を奪う刑罰)
  • 財産刑(人の財産を奪う刑罰)
  • 名誉刑(人の名誉を奪う刑罰)

わが国の現行刑法では、生命刑としての死刑、自由刑としての懲役・禁錮・拘留、財産刑としての罰金・科料・没収のみ認められています。
刑の具体的な執行内容は、刑法によって定められています。例えば、以下のように定められています。
「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」(刑法第199条)
これはいわゆる殺人罪に関する条文規定となっています。しかし刑の範囲が一番重いもので死刑、一番軽いもので5年の懲役と振れ幅が非常に大きいものとなっています。よって実際に宣告される刑の内容は、裁判所の判断に委ねられることとなります。これを量刑判断といいます。
現行刑法の全ての刑罰規定において、量刑判断の基準に関して明示したものはありません。前述した殺人罪においても、死刑になるか懲役刑になるかは先例の積み重ねによって、事実上の選択基準が形成されているに過ぎません。量刑の判断には、明示されたものがあるわけではなく犯行の情状などに鑑みて、処断刑の範囲内で宣告されるものとなっています。(まれに、処断刑の範囲を超えた判決が言い渡される場合もあります。)

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