他人に債権をもっていますが消滅時効期間はどうなっていますか?
以前、友人にお金を貸したのですが、長い間何もせずに過ごしてきました。貸したお金は、一定期間経過すると、時効になって返してもらえなくなると聞いて心配です。どのくらいの期間で時効になってしまうのですか。
お金を貸した人が借りた人に対してお金の支払いを要求するなど、特定の人に対して一定の給付を請求できる権利のことを債権と言います。
法律では、債権は原則として10年で消滅時効にかかるとされています。つまり、お金を貸したという債権を消滅時効の期間が経つまで放っておき、相手方が消滅時効が成立したことを主張すれば(これを時効の「援用」といいます)、貸したお金を返してもらうように請求することができなくなるのです。
但し、権利を行使すれば、時効の進行を中断させることができます。
なお、債権の種類によって、消滅時効の期間が異なります。
どういう債権が何年の時効にかかりますか?
貸金や売掛金、損害賠償請求権等の債権も、一定期間が経過すると消滅時効にかかります。民法では、債権の消滅時効期間は原則10年と定められていますが、債権の種類によって例外が認められているので、注意が必要です。以下はその一例です。
消滅時効期間 | 債権の内容 |
---|---|
1年 | ・月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料にかかる債権 ・自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権 ・運送賃に係る債権 ・旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権 ・動産の損料(たとえば、レンタルCD、DVDなどの貸出物の損料)に係る債権 |
2年 | ・弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権 ・生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権 ・自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権 ・学芸又は技能を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権 ・労働基準法の規定による債権(退職手当を除く)、災害補償その他の請求権 |
3年 | ・医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債 権 ・工事の設計、施工又は管理を業とする者の工事に関する債権 ・不法行為債権(ただし、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から) |
5年 | ・商行為によって生じた債権 ・年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権(定期給付債権) ・退職金債権 |
10年 | ・確定判決、裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利 |
20年 | ・不法行為債権(不法行為の時から) |
時効を援用するというのはどういうことですか?
消滅時効の期間が経過しても、それだけで債権が消滅するわけではありません。借りたお金を返さなくて良いなど、時効の効果を得るためには、時効を「援用」しなければなりません。
時効の「援用」とは、時効によって利益を受ける人が、時効が成立したことを主張することをいいます。援用の方法は、単に「消滅時効を援用する」と相手方に伝えるだけで足ります。但し、裁判になっていない場合は、援用した事実を明確に残して、将来裁判になった時に備えて証拠化しておくため、内容証明郵便を利用することが一般的です。裁判になっている場合は、裁判所に提出する答弁書や準備書面の中で、「原告主張の債権については消滅時効が完成しているため、被告は本書をもってこれを援用する」という方法で主張をします。
仮に、貸主が裁判で「お金を返せ」と請求している場合は、時効を援用しないと、通常どおり支払いを命ずる判決が下されることになるので注意が必要です。
時効が「中断」するというのはどういうことですか?
消滅時効は、一定期間講師をしない場合、権利を消滅させる制度ですが、これは「請求できるのに何もしないで放っておくような、権利の上に眠る者は保護しない」として、「長期間請求がないから今後も請求されることはないだろう」という借り手である債務者側の期待を保護する目的があります。
反対に、消滅時効は、権利を行使すれば進行を中断させることが可能です。債権を回収するために何らかの行動を取ったり、債務者自身が「自分はお金を借りている」と、債務の存在を認識している場合は、時効の「中断」が認められます。
時効の中断とは、時効期間の進行が停止するのではなく、時効期間の進行がリセットされることを意味し、通常の債権の場合であれば、中断時点からさらに10年間が経過しないと、時効は完成しません。
中断事由には次のようなものがあります。
中断事由 | 内容 |
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請求 | 裁判等で支払いを求めることです。 ※内容証明等、通知書で求めることは「催告」といい、「請求」ではないので、時効は中断しません。但し、催告から6か月以内に、時効中断事由にあたる手続きを行えば、時効が中断されます。 |
差押え 仮差押え 又は仮処分 |
差押えをすることで時効が中断します。但し、判決書、和解調書や、強制執行認諾文言付の公正証書に基づいて、正式に差押えを行うことが必要です。 裁判を起こす前に、仮差押えや仮処分を実施する場合も同様です。 |
承認 | 債務者が、債務の存在を認めることです。 具体的には、借金を一部返済したり、支払猶予を求めること等も「承認」に含まれます。 |
時効が問題となる場合の対処方法とは?
時効期間が経過したからといって、直ちに債権が消滅して、お金を巡るトラブルが解決するわけではありません。貸した側(債権者)にとっては、時効期間の経過によりすぐにお金を諦める必要はなく、借りた側(債務者)としては、時効期間が経過したからといって安心していては後で思わぬ請求が来る場合があります。
時効が絡む問題は、時効の中断事由がはたして存在していたのか等、様々な言い分が対立する場合が少なくありません。このような場合は、弁護士による早期且つ適切な助言が問題解決に有効な場合は多くあります。