労働組合から団体交渉を申し込まれた場合、労働者との間で賃金等の労働条件の問題や解雇の問題等で既に問題が顕在化しているものと思われます。
団体交渉を求められた場合、使用者には団体交渉について合意達成の可能性を模索して誠実に交渉しなければならない義務(誠実交渉義務)が課せられています。その趣旨は憲法上の権利である労働者の団体交渉権を裏から実質的に保障するものです。ただし、使用者は団体交渉に応じる義務はありますが組合の要求に応じる義務はありません。もっとも、ここでの対応を間違えると、問題が長期化、拡大化しますので慎重かつ迅速に対応する必要があります。
団体交渉に際しての一般的な注意点は、以下のとおりです。
労働組合についての情報を収集する。
団体交渉申入れをしてきた労働組合が、会社内の労働組合であれば、組織の内容についてある程度把握することはできます。しかし、例えば合同労働組合のような社外で組織された労働組合の場合には、組織の実態もわからないことも多いと思います。こうした場合には、ホームページ等で当該組合の組織内容、活動の方針や状況等について確認することが、団体交渉の下準備として重要です。
交渉のスケジュールを確認する。
労働組合から交渉の申し入れをされた場合、同時に団体交渉の日時の指定がされることが多々あります。しかし、使用者側としては、準備不足のまま団体交渉に臨むことは避けなければなりません。まずは時間猶予の申入れを行い、事前準備として事実調査や弁護士に依頼するなどを行う必要があります。もっとも、単なる引き延ばしに過ぎない時間猶予の申入れは合理的な理由の無いものとして不当労働行為と評価されてしまうこともありますので注意が必要です。
出席者について
労働組合側で誰が出席するのかを予め確認すると良いでしょう。
一方、労働組合側では、社長に強く出席を求めることがよくあります。しかし、使用者側としては交渉権限がある担当者を出席させれば、誠実交渉義務を十分に果たしているといえます。
会社代表者が出席する場合には、労働組合側から厳しい追及を受け、その場での回答を求められたりすることもしばしばあります。そのような場合には、即座に回答ぜずに持ち帰って検討するなど場の雰囲気に流されてしまわず冷静に対応することが必要です。
交渉の場所と時間に注意する
交渉の場所については、交渉がエンドレスになってしまう危険があるので会社内はできる限り避けた方が良いでしょう。公共の会議室等を指定するのが望ましい対応です。労働組合の事務所も交渉がエンドレスになってしまいがちなのは社内で行う場合と同様ですが、加えて相手方のホームグラウンドであるので、労働組合側のペースに飲み込まれてしまいやすいという点、どうしても労働組合の事務所で交渉を行わなければならないような場合には、弁護士を同行させる等の事前の対策が必要となります。
交渉の時間についても、交渉がエンドレスになる恐れがあるので何時から何時までと適切な交渉時間を設定することが大切です。また、できる限り労働時間内は避けた方が良いでしょう。
議題について確定する
労働組合側からの団体交渉申入書に記載のある議題が、広範にわたっている場合には適宜修正を加えて議題を絞り、議論が波及・紛糾しないよう事前に調整する必要があります。