FAQ – 交通事故

運転手の使用者(勤め先など)や、いわゆる運行供用者に対して、損害賠償請求できることがあります。

 

使用者責任というのはどういうものか。

民法715条1項本文では、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と定められています(使用者責任)。

例えば、従業員が、会社の仕事で自動車運転をしている際、事故により他人に損害を与えた場合、会社は、その従業員と連帯して、その損害について賠償しなければなりません。

 

運行供用者責任というのはどういうものか。

自動車損害賠償保障法3条本文では、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。」と定められています。

この規定によって、自動車の運行供用者は、①自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、②被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと、③自動車の構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと、の3点を立証しない限り、損害賠償責任を負うことになります。

通常の損害賠償責任の追及による場合、証明責任は被害者側にありますが、この規定によれば加害者側に証明責任があります。

 

弁護士に委任すると……

交通事故の直接的な加害者である運転手に対して損害賠償請求したくとも、資力がない等の理由でこれができない場合もあります。そのような場合、他の者に責任追及することにより、被害回復を図ることができる場合があります。

交通事故の補償問題等でお悩みの際は、高木光春法律事務所にご相談ください。

交通事故に遭い、現在治療しています。今後、解決までにどのような流れを辿りますか。

 

まずは、しっかりと治療に専念されてください。

傷が完治するか、それ以上の改善が見込まれない状態となった(症状固定)後、加害者が加入する保険会社から示談案が提示されます。

その金額に納得できない場合は、裁判(又は、調停・ADR)を提起します。

 

解決までの流れ

事故発生から解決までは、概ね次のような流れをたどります。

1.事故発生
2・治療
3.症状固定
4.後遺障害の認定
5.賠償額(示談案)提示
6.示談交渉
7.ADR・調停・裁判
8.解決

 

弁護士に委任すると……

解決までの過程においては、例えば、「保険会社の対応が悪い」、「後遺障害の認定に納得ができない」、「賠償額の提示に納得ができない」といった、さまざまな悩み、不安が出てきます。

そのような中で、一つずつ問題点をクリアし、適正な賠償額の獲得という一つの解決に導くためには、専門家によるサポートが不可欠です。

交通事故のことでお困りの際は、高木光春法律事務所にご相談ください。

 

「症状固定に至った」というのはどういうことですか。

治療を続けても大幅な改善が見込めなくなった段階を、「症状固定」といいます。

症状固定に至る前は、治療費、休業損害、入通院慰謝料などが請求できるのですが、改善が見込めなくなった後は、これらが請求できなくなる代わりに、「後遺症による損害」として、逸失利益や、後遺障害慰謝料を請求できます。

では、「症状固定」を決めるのは誰でしょうか。

実務では、保険会社から治療費の打ち切りを告げられるケースもありますが、必ずしも治療費一括払いの打ち切り=症状固定ではありません。治療費の打ち切りはあくまで保険会社の主張であってこれに従う必要はありません。

症状固定は医師が診断することであり、そのタイミングは被害者自身と症状経過を見てきた医師とが一緒に決めるべきことです。症状固定については、医師と相談のうえ、慎重に決めてください。

大きく分けて、積極損害、消極損害、後遺症慰謝料の3種類です。

積極損害

積極損害とは、被害者が事故のために支出を余儀なくされた費用のことで、具体的には、治療費、付添看護費、通院付添費、将来介護費、通院交通費・宿泊費、家屋・自動車等改造費、装具費、弁護士費用、損害賠償請求関係費などが挙げられます。

消極損害

消極損害とは、その事故がなければ得られたであろう利益を失ったことによる損害のことで、後遺障害事故の場合、症状固定前は休業損害、症状固定後は後遺症逸失利益がこれにあたります。

後遺症逸失利益の算定方法としては、例えば、有職者又は勤労可能者の場合、《基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(将来利息の控除)》によって求められます。

また、18歳(症状固定時)未満の未就労者の場合、《基礎収入額×労働能力喪失率×(67歳までのライプニッツ係数-18歳に達するまでのライプニッツ係数)》によって求められます。

後遺症慰謝料

目安は、次の表のとおりです。

(財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編集・発行損害賠償額選定表基準(いわゆる「赤い本」)

第1級 2800万円
第2級 2370万円
第3級 1990万円
第4級 1670万円
第5級 1400万円
第6級 1180万円
第7級 1000万円
第8級 830万円
第9級 690万円
第10級 550万円
第11級 420万円
第12級 290万円
第13級 180万円
第14級 110万円

 

重度の後遺障害の場合には、近親者にも別途慰謝料請求権が認められる場合があります。

また、自賠責14級に至らない後遺障害があった場合等でも、それに応じた後遺障害慰謝料が認められる場合もあります。

 

弁護士に委任すると……

上記で詳細に述べたように、交通事故における賠償額の算定は非常に難解であり、専門家によるサポートが不可欠です。

高木光春法律事務所では、ご提示いただいた資料を基に適正な賠償額を算出し、被害者の代理人として加害者ないしその保険会社との今後の交渉や、法的手続きを行います。

交通事故に関する法律相談で重要なことは、事故態様、治療の状況(症状固定しているか否か)、相手方保険会社との交渉状況、弁護士費用特約の有無等です。

それに関連する資料、たとえば、診断書や交通事故証明書などをお持ちいただければ、相談ができます。

 

交通事故の法律相談では何が聞かれるか?

交通事故の事案では、過去の裁判例の集積等により、過失割合や、慰謝料額の基準などが類型化されています。

そのため、相談時にお伺いする内容もある程度決まっています。具体的には事故態様、治療の状況(症状固定しているか否か)、相手方保険会社との交渉状況、自分の加入している保険に弁護士費用特約がついているかどうかなどです。

 

交通事故相談では何が重要か?

・事故直後から適正な頻度で病院に通っているか。

通院期間は、慰謝料の算定において重要な意味をもちます。しかし、事故から日数が経ってから突然病院に通いだしたり、日数が経つにつれ通院頻度が高くなったりすると、賠償額を上げるための行動との疑いをもたれることもあります。

仕事の関係でなかなか病院に行けなかったり、無理をして病院に行かない方もおられるかもしれませんが、適正な賠償額を獲得するためには、交通事故の解決にとっては定期的な(且つ適正な)通院が不可欠です。

・十分な治療を受け終わっているか?

最終的な示談は症状固定後しかできませんので、症状固定の有無は重要です。ただし、症状固定前でも、保険会社への対応等に関してご相談をお受けすることはもちろん可能です。

・過失割合の対立はないか?

過失割合については一定の基準が存在しますが、事故の事実認識の違いのほか、事実認識に違いがなくとも、基準自体に修正要素があるため、相手方保険会社が提示してくる過失割合が適正であるとは限りません。

過失割合に対立がある場合などは、ご相談ください。

・弁護士費用特約の有無を確認しよう!

ご自身や同居のご家族が加入されている保険に、弁護士費用特約がある場合、交渉・裁判を弁護士に依頼するための費用を保険でまかなうことができるため、それだけ解決に向けた選択肢の幅が拡がります。

弁護士費用特約の有無を、よくご確認ください。

交通事故により損害を被った場合、「不法行為に基づく損害賠償請求権」に基づいて請求していくことになりますが、この請求権は、損害つまり事故によって被った損害及び加害者つまり事故の相手方を知った時から3年で消滅時効にかかります。

怪我や死亡による損害については、この期間は5年に延長されます。

ただし、自賠責保険への被害者請求権については、事故から3年で消滅時効にかかりますので、注意が必要です。

 

消滅時効とはどういうもので、いつ時効が完成しますか?

相手方保険会社の出してくる和解条件に納得できなかったり、後遺症の認定等級に納得できなかったりして、示談しようとしないケースもあるようです。

しかし、事故から3年以上が経過すると、請求権が時効にかかり、請求できなくなる可能性があるので、注意が必要です。(厳密にいえば、「損害及び加害者を知った時から3年」とされていますが、ひき逃げなどの事例でない限り、事故から3年と考えておくのが無難です。)

なお、後遺障害については、後遺障害の症状が固定してから消滅時効が進行します。

 

弁護士に委任すると……

事故から長期間経過している場合、消滅時効を意識した交渉、その他の手続きが必要となります。高木光春法律事務所では、時効が迫っている事件については、最優先でその処理にあたり、受任後直ちに時効中断の措置をとります。

傷害事故の場合、積極損害、消極損害、精神的苦痛に対する損害賠償請求(慰謝料請求)を行います。

積極損害

積極損害とは、被害者が事故のために支出を余儀なくされた費用のことで、具体的には、治療費、付添看護費、通院付添費、将来介護費、通院交通費・宿泊費、家屋・自動車等改造費、装具費、弁護士費用、損害賠償請求関係費などが挙げられます。

消極損害

消極損害とは、その事故がなければ得られたであろう利益を失ったことによる損害のことで、傷害事故の場合、休業損害がこれにあたります。

慰謝料

慰謝料の額は、入院や通院期間を基礎として算出されます。

 

弁護士に委任すると……

賠償額については一定の基準が存在しますが、基準への当てはめには相当程度の知識を要するほか、煩雑な事務作業が要求されます。適正な賠償額を算出するにあたっては、専門家による助言が有効です。

高木光春法律事務所では、ご提示いただいた資料を基に適正な賠償額を算出し、被害者の代理人として加害者ないしその保険会社との今後の交渉や、法的手続きを行います。

交通事故を起こした場合、加害者は、行政上、刑事上、民事上の、3種の責任を負うことになります。これらは別個独立の責任であり、それぞれ同時並行で手続きが進行します。

 

行政上の責任

交通事故における行政上の責任とは、道路交通法に基づいて行われる行政処分のことで、反則金の支払い、免許の停止・取消などがあります。なお、反則金は「罰金」とは異なり、刑事上の処分ではなく、行政上の処分ですので、刑罰ではありません。そのため、反則金を科せられても前科はつきません。

 

民事責任

交通事故を起こした場合、それによって他人に生じさせた損害について賠償しなければなりません。

損害には、人身損害(人損)と物的損害(物損)があります。

さらに、人損は、財産的損害と精神的損害に分けられ、財産的損害は積極損害と消極損害に分けられます。

民事上の責任については、別に詳細に解説いたします。

 

刑事責任

交通事故によって人を死傷させてしまった場合、刑事特別法や道路交通法に基づいて加害者に刑罰が科されます。

交通事故に関しては、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律に、次のような条項があります。

(危険運転致死傷)

第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。

 

(過失運転致死傷)

第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

まずは、相手方保険会社が提示してきた示談金額と、仮に裁判になった場合に認められるであろう金額(裁判基準による賠償額)を比較してみてください。そして、単なる金額の多い少ないだけをみるのではなく、仮に裁判になった場合の時間や労力、弁護士費用の負担を考慮し、相手方保険会社の提示する示談に応じるかどうかを決めるべきです。この判断は専門家である弁護士のアドバイスを受けてするといいでしょう。

 

弁護士に委任すると……

高木光春法律事務所では、裁判上、賠償請求した場合、どの程度の支払が命ぜられるかについて、ご提示いただいた資料に基づいてシミュレーションします。

保険会社の提示した金額に納得がいかない、裁判をすべきか悩んでいるという場合は、高木光春法律事務所にご相談ください。

怪我の苦痛、治療のストレス、職場からの離脱、家族への負担…。交通事故は、人の生活を一変させます。

怪我が完治するか、症状固定となり、治療が終了すれば、相手方保険会社との間で、示談に向けた交渉を行うことになります。しかし、あなたとは利害が対立する相手ですから、常に誠実な対応をしてくれるとは限りませんし、保険会社が提示する賠償額は、いわゆる裁判基準よりも低い水準に抑えられています。

「保険会社の提示に納得ができない」、「これ以上のストレスを抱え込みたくない」という方は、是非、高木光春法律事務所にご相談ください。

あなたの最大利益の実現に向けて、強力にサポートします。

保険会社が提示してきた賠償額には不満がありますが、弁護士を依頼するとなると、その費用もかかるので、あきらめて示談に応じた方がよいのでしょうか?

 

示談案にどうしても納得ができないという場合は、ご自身が加入されている保険に、弁護士費用特約がついていないかご確認ください。これが利用できれば、自己負担なしで弁護士を依頼し、賠償額の増額を期待することができます。

 

弁護士費用特約の意味

任意保険に加入していても、例えば赤信号で停止中に後ろから追突されたなど、ご自身に全く過失がない場合には、被害者側の保険会社は交渉を代行することはできません。

その場合、ご自身で加害者側の保険会社と示談交渉を行うことになりますが、その作業は相当に骨が折れます。

このような時、任意保険に「弁護士費用特約」がついていると、非常に便利です。

通常、1事故につき、300万円までの弁護士費用が補償されることが多く、ほとんどのケースで、自己負担なしで弁護士を依頼することができます。

弁護士費用特約を利用するにあたっては、保険会社の紹介等は必要なく、ご自身で選ぶことができます。

また、ご自身ではなく、同居の親族が加入されている保険でも補償される場合がありますので、保険会社に問い合わせるなどして、よくご確認されることをお勧めいたします。

損益相殺の意味

損益相殺とは、交通事故によって損害を受けた被害者が、その事故によって利益も得た場合に、公平の見地から受けた利益を損害から控除して損害賠償額を定めることをいいます。

この控除については、民法その他の法律に明文があるわけではありませんが、当事者の公平の見地から、判例によって認められています。

損益相殺として控除できるのは、利益と損害が「同一の原因」によって生じ、利益と損害との間に「同質性」がある場合とされています。

例えば、交通事故により被害者が死亡し、遺族が生命保険金を受領した場合でも、生命保険金は、既に払い込んだ保険料の対価とみなされるため、同質性がなく、損害からの控除はされないとされています。

損益相殺がされるか否かに関しては裁判例の集積があり、概ね次のとおりとなっています。

控除した例
受領済の自賠責損害賠償額
政府の自動車損害賠償保障事業填補金
受領済の各種社会保険給付
遺族厚生年金
休業補償給付金・療養補償給付金
傷病手当金
高額療養費還付金
遺族基礎年金
遺族共済年金
控除しなかった例
自損事故保険金
搭乗者傷害保険金
生命保険金
傷害保険金
労災保険上の特別支給金等
生活保護法による扶助費
社会儀礼上相当額の香典・見舞金
雇用対策法に基づく職業転換給付金
特別児童福祉扶養手当
介護費用の公的扶助
身体障害者福祉法に基づく給付

 

弁護士に委任すると……

高木光春法律事務所では、損益相殺に関して納得がいかない、専門的な見地から検証してほしいという方からのご相談をお受けしております。

損益相殺に関し、お悩みの方は、高木光春法律事務所にご相談ください。

死亡事故の場合、積極損害、消極損害、精神的苦痛に対する損害賠償請求(慰謝料請求)を行います。

積極損害

積極損害とは、被害者が事故のために支出を余儀なくされた費用のことで、具体的には、治療費、付添看護費、葬儀費、弁護士費用、損害賠償請求関係費などがあります。

消極損害

消極損害とは、その事故がなければ得られたであろう利益を失ったことによる損害のことで、死亡事故の場合、死亡逸失利益がこれにあたります。

算定方式としては、就職者または就労可能者の場合、《現実の年収額又は学歴計あるいは学歴別の男女別平均賃金×(1-生活費控除率)×67歳までのライプニッツ係数》によって求められます。

また、18歳未満の未就労者の場合、《学歴計の男女別あるいは全労働者平均賃金×(1-生活費控除率)×(67歳までのライプニッツ係数-18歳までのライプニッツ係数)》によって求められます。

死亡によって本来得られるはずの利益が得られなくなった反面、本来支出するはずだった費用(生活費)の支出を免れることになるため、適正な損害額の算出という見地から、生活費に相当する割合について、控除されることになります(生活費控除)。

現在の裁判実務では、概ね次のような基準で控除されます。

①     一家の支柱 被扶養者1人の場合 40%
被扶養者2人以上の場合 30%
②     女性(主婦・独身・幼児を含む) 30%
③     男性(独身・幼児を含む) 50%

 

死亡慰謝料

死亡慰謝料の目安については、次のように紹介されています。

財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編集・発行
損害賠償額算定基準(いわゆる「赤い本」)

一家の支柱 2800万円
母親、配偶者 2400万円
その他 2000万円~2200万円

財団法人日弁連交通事故相談センター専門委員会
交通事故損害額算定基準(いわゆる「青本」)

一家の支柱の場合 2700万円~3100万円
一家の支柱に準ずる場合 2400万円~2700万円
その他の場合 2000万円~2400万円

 

以上は、あくまでも目安で、具体的事件に対する慰謝料額は、諸般の事情を総合的に考慮した上で裁判所が判断します。

事故態様が悪質な場合(飲酒運転、赤信号無視等)、事故後の行動が極めて悪質な場合(ひき逃げ、証拠隠滅、被害者に対する不当な責任転嫁等)などには、基準額を上回る慰謝料が認定されることもあります。

 

弁護士に委任すると……

上記で詳細に述べたように、交通事故における賠償額の算定は難解であり、専門家によるサポートが不可欠です。

高木光春法律事務所では、ご提示いただいた資料を基に適正な賠償額を算出し、被害者遺族の代理人として加害者ないしその保険会社との今後の交渉や、法的手続きを行います。

先日、交通事故に遭い、追突され車を壊されました。修理費を相手方保険会社に請求したところ、「修理費が車両時価より高いので、車両の時価分しか払えません。」と言われてしまいました。しかも、その時価も実際より低額すぎて車の買い換え費用にはまったく足りません。

 

いわゆる「経済的全損」と判断される場合、残念ながら修理費全額を請求することはできません。しかし、車両の時価については増額の請求・交渉ができるほか、自動車を再調達するにあたって必要な費用についても上乗せして請求できる場合があります。

 

経済的全損とはどういう意味でしょうか?

自動車事故の分野で、「全損」には、一般的な意味の「物理的全損」つまり、修理ができない場合と、修理費がその車両の買い換え費用を上回る「経済的全損」とがあります。

経済的全損と判断されてしまうと、たとえ自分には一切過失がない事故だったとしても、修理費全額を賠償してもらうことはできません。被害者の方にとってはとても納得のいかないことですが、判例が確立されているので争うのは困難です。

車両の時価については、相手方保険会社は、業務上の慣行として有限会社オートガイドという会社が発行している「レッドブック」に基づいて主張してくることが多いようです。

しかし、一般的にいって、「レッドブック」に記載されている価格は、中古車市場で購入できる金額よりも低額である場合が少なくありません。

裁判で実際に認められる損害額は、レッドブックによる価格ではなく、中古車市場で調達するのに必要な価格(再調達価格)ですから、実際の時価がレッドブックより高額であることを示す資料があれば、相手方保険会社との間でも交渉ができます。

まず、被害に遭った車と同等の車両を中古車市場で調達する場合、どの程度の価格になるかを調査しましょう。自動車の場合は、色や装飾、走行距離等の条件によって価値、価格が変わってきますから、なるべく同じ条件のものをピックアップする必要があります。

また、損害として認められるのは、車両時価だけに限らず、被害に遭った車を中古車市場で調達する場合にかかる諸費用も含まれます。

例えば、登録手数料、車庫証明手数料、納車手数料、廃車手数料、自動車取得税、新しく取得する車両本体価格に対する消費税相当額、事故車両の自動車重量税の未経過分などです。

これらによって、裁判上認められるであろう損害額と、相手方保険会社による提示額との差を比較してみましょう。

そして、単なる金額の多い少ないだけをみるのではなく、仮に裁判になった場合の時間や労力、弁護士費用の負担を考慮し、相手方保険会社の提示する示談に応じるかどうかを決めるとよいでしょう。

 

弁護士に委任すると……

高木光春法律事務所では、物損事故に関してもご相談をお受けしております。今後の交渉方法や、裁判上請求することの是非等について、適切なアドバイスを差し上げますので、お悩みの際は、高木光春法律事務所にご相談ください。

交通事故の被害者は、加害者が加入する保険会社に対して、保険金額の限度で損害賠償額の支払を求めることができ、これを被害者請求といいます。

 

自賠責保険の被害者請求

加害者(被保険者)が賠償金を支払ってくれればよいのですが、支払いをしない場合や示談が成立していない場合、被害者がいつまでも損害賠償金を受け取れないことになりかねません。

そこで、自賠責保険においては、保有者に損害賠償責任が発生した場合、被害者が、直接保険会社に対して、損害賠償額の支払を請求することができます。

被害者請求権は、3年で消滅時効が完成します。

そこで、加害者との示談がなかなか成立しないときは、被害者はとりあえず保険会社に対して請求するか、時効中断の申請をして、保険会社の承認を得るなどして、時効が完成しないよう注意する必要があります。

被害者が死亡した場合や、交通事故で被害者が重度の傷害を負ったことにより死亡した場合と同じ位の精神的苦痛を被った場合については、親族に固有の慰謝料請求権が認められることがあります。

交通事故により、被害者が亡くなった場合、被害者を相続した親族が、加害者に対する損害賠償請求権を相続により取得することになります。(相続人の範囲については、相続に関するページを御参照下さい。)

そのこととは別に、民法711条では、「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない」と定められています。

そのため、被害者が交通事故により死亡した場合、事故によって被害者本人が取得した慰謝料請求権を、親族が相続するだけではなく、その親族本人も固有の慰謝料請求権を取得することができます。

また、条文上では、被害者が死亡した場合についてのみ定められていますが、最高裁判所は、傷害を負った者の母が、被害者が生命を害された場合にも比肩すべき精神上の苦痛を受けたときは、民法709条と710条に基づいて自己の権利として慰謝料を請求しうると判示しています。

 

弁護士に委任すると……

高木光春法律事務所では、交通事故に遭った方の、親族の方からのご相談もお受けしております。交通事故の補償問題等でお悩みの際は、高木光春法律事務所にご相談ください。

先日、交通事故に遭い、けがをしました。加害者が加入する保険会社から賠償額の提示を受けましたが、とても納得できる金額ではありません。増額を求めたところ、「これ以上は払えないので、不満があるなら裁判をしてください」と言われてしまいました。そもそも賠償額の算定基準とはどのようになっているのでしょうか。

 

交通事故の賠償額は、ケース別にだいたい類型化されていますが、金額の基準が複数あります。自賠責基準→任意保険基準→裁判基準の順で高くなり、裁判をすることで賠償額が増額されることがあります。

 

賠償額算定の「支払基準」は3種類あります

人身交通事故は、当事者にとっては一生に一度あるかないかの一大事ですが、社会全体でみると日々、人身交通事故が起きているので、過去の分を含めると膨大な数の事例が集積されています。そのため、事案ごとで不公平な結果にならないように、また、個別の事案で判断に迷わないように、「**の結果が生じたら、**円の賠償額になる。」という「基準」が、明確に確立されています。

問題なのは、この「基準」が、複数あるということです。

もっとも低い基準は、自賠責保険による基準です。

自賠責保険は、交通事故が生じた際に、被害者への補償が最低限なされるために加入が義務づけられている強制保険ですので、これによって補償される金額も最低限に留まります。

次に低い基準は、任意保険による基準です。

これは、任意保険の賠償責任保険について、各保険会社が自ら定めている支払基準で、公表されているわけではありませんが、一般的には「自賠責基準+α」というイメージです。

交通事故の被害に遭われた方が相手方保険会社と交渉をすると、相手方保険会社は、この任意保険基準で示談金額を提示してきます。

もっとも高い基準は、裁判基準です。

交通事故の事案は、裁判所で扱う場合も、「**の結果が生じたら、**円の賠償額になる。」という「基準」が存在していて、しかも、赤い本と呼ばれる「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故センター東京支部)、市販されている資料(通称青本と呼ばれる「交通事故損害額算定基準」(日弁連交通事故相談センター)から、その「基準」がわかります。

交通事故の発生に関してご自身にも責任がある場合に、過失割合に応じて損害賠償額が減額されることをいいます。事故類型ごとに過失割合の基準があります。

 

賠償額の調整

交通事故により損害が生じても、ご自身にも過失があるという場合、いわゆる過失相殺によって賠償額が減額されることになります。

 

過失相殺って?

民法722条2項は、「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と規定しています。過失相殺は、当事者の公平の見地から、被害者に事故の発生や損害拡大に落ち度がある場合に損害賠償額を減額する制度です。

一般的に、各損害費目を合計して総損害額を算出し、総損害額から過失相殺して賠償額を算出します。

過失相殺率については、現在では相当詳細に運用基準が定められ、その運用表に則って決められます。

もっとも、当該の事故がどの類型の事故にあたるのか、どのような修正がなされるのかについて理解するには、専門知識も必要となりますので、保険会社から提示された過失相殺率に疑念がある場合は、それを鵜呑みにすることなく、弁護士の意見を聞いてみるのが得策といえます。

 

弁護士に委任すると……

高木光春法律事務所では、事故態様などのご事情をお伺いし、適正な過失割合について検証いたします。

保険会社から提示された過失割合に納得がいかないなどのご事情がありましたら、高木光春法律事務所にご相談ください。

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