令和6年5月10日、宇都宮市文化会館会議室において、第4回企業リスク管理法律講座として、下請法についてのセミナーを行った。参加者は、8名であった。
下請法を扱うきっかけは、ここのところ、日産自動車が下請部品会社に減額を強要したり、コストコが下請に不当に返品を行ったといった問題が新聞紙上を賑わせたことによる。この機会に、下請法の趣旨、概要を知り、交渉のツールにしていただければ幸いである。
1 下請法は、独占禁止法(優越的地位の濫用規制)を補完する法律であり、一律に禁止の対象を定める点で、個別案件に応じて適応を検討する独禁法と異なる。
2 下請法は、業務の委託内容に応じてあるときは自社が親事業者になり、またある時は自社が下請事業者になることがあるが、基本的には、下請事業者になることが多いと思われる。
3下請法が適用される取引のうち、製造委託、修理委託に関する場合と情報成果物作成委託、役務提供委託の場合では、親事業者と下請事業者の資本金区分が異なる。
4では、どのような行為が違反行為にあたるのか。買い叩き(異常に短い納期で製造させるなど)、下請代金の減額、支払遅延、受領拒絶、不当返品、物の購入強制、割引困難な手形の交付などが行為が禁止行為にあたる。
日産自動車の下請事業者に対する減額強制は前記のとおり新聞にも掲載された(本年3月4日読売新聞)。
下請事業者は、立場上、減額要求を拒みにくいというのがこの種の事案の特徴である。
5下請法に違反すると、公正取引委員会による勧告がなされ、勧告内容は公表される。刑事罰もある。場合によっては、民事上の請求も可能である。
勧告に至らない事案についても、公取委や中小企業庁による指導がなされるケースもある。
悪質な取引相手に対する武器の一つとして、下請法を理解しておくことは意味がある。
ただ、実際にこの法律を用いることは相当の勇気がいることは間違いない。