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弁護士ブログ/サリン事件

先週は、地下鉄サリン事件から30年ということで、テレビなどからオウム真理教の名前が聞こえてきました。

私は当時小学生ということもあり、事件当時のニュースなどはほとんど覚えていません。

とはいえ、その後もしばらくの間、隣市に「オウム真理教(アレフ)絶対阻止」と書かれた看板が建っていたので、ピリピリした雰囲気が記憶に残っています。

当時、オウム真理教の信者が大田原市内に移り住み、周辺住民から反対運動が起きたと聞いています。

今思うと、あれだけ大きな事件を起こした団体ですが、どこまで活動を制限できるかというのもなかなか難しい問題のように感じます。

 

坂本弁護士一家殺害事件や、滝本太郎弁護士襲撃事件も、オウム真理教による事件の一部です。オウム真理教からの脱会支援をしていた弁護士が襲われました。

幸い、私は業務において生命の危険にさらされたことはありません。オウム真理教ほど危険な団体と直接関わったこともないかと思います。

ですが、弁護士の先人として、こういった事件に関与し、依頼者のために戦った方がいるということは、肝に銘じておきたいものです。

 

事務局ブログ/日本舞踊の魅力に触れてきました

ごきげんようジムカタです。この頃すっかり春の気配・・・かと思いきや、数日前はとても冷たい雨が終日降り続きましたね。春のお天気は変わりやすく不安定。

そんな先日、さくら市にて開かれた『みんなで楽しむ日本舞踊』という催し(舞台)を観てまいりました。伝統芸能全般に言えることですが、現代の私たちにとっては日本舞踊の唄も踊りも、何やら難しいものと思えてしまいますよね。私自身もその一人ですが、今は亡き祖母から幼い頃に少しだけ日舞の手ほどきをしてもらったこと、そしてその祖母の着物姿に憧れを持ち、自分自身で着物を楽しむ大人になったことにより少々関心を持っています。

三味線や琴の演奏あり、踊りあり、小さいお子さんを舞台にあげての分かりやすい解説あり。司会の方(常磐津節浄瑠璃方で唄いを披露する場面もあり)の盛り上げ上手も相まって、日本舞踊の魅力を味わえる充実した時間でした。こんなに分かりやすく楽しめる公演であれば、何度でも観たい!

みんなで楽しむ日本舞踊を開催しました | さくら市公式ホームページ

公演同日、宇都宮城址公園の桜。ほんの一部だけ開花していました。

弁護士ブログ/地域司法というものについて

皆さんは、地域司法という言葉を聞いたことがあるでしょうか。おそらくないでしょう。

この栃木県では、弁護士の間でもあまりなじみのない言葉です。

 

何時でも、何処でも、誰でも弁護士に相談することができ、裁判所を利用することができる環境を整えることが、この地域司法の充実ということになります。すべての人が、法の支配の理念の下で裁判制度を簡単に利用できるというコンセプトです。

 

地域司法の充実は、主として民事事件、その中でも離婚や相続などの家事事件での有用性が叫ばれてきました。家事事件では、感情的な対立、利害の対立が先鋭で解決が困難です。 ここに代理人として弁護士が入ることで初めてよい解決に導くことができます。

 

皆さんがこのような紛争に巻き込まれた場合、すぐ相談できる弁護士はおりますか。他県のあるところでこの質問をしたら、「司法書士がいるから十分だ。」という答えが返ってきてびっくりしました。相対立する当事者の間に立って解決できるのは裁判所だけです。それに、家事事件について専門知識をもって一方当事者の代理人になれるのは、弁護士だけです。

 

身近に裁判所があり、弁護士がいること、これが法治国家の基本です。この高齢化の時代、子供や身内に相談しようにも孤立して相談しにくい、となると専門家の弁護士に相談するのが一番です。最後に、山浦善樹先生(元最高裁判事)の講演会での次の言葉を引用して終わります。

 

「僕はお金を貸すことはできません、金融業者ではないから。売上や事業拡大に専念することもできません、ビジネスマンではないから。薬や手術で病気を治すこともできません、医者ではないから。どんどん出世して偉くなることもできません、役人ではないから。・・・

でも、目の前の依頼者が抱えている問題点を整理して解決策を考え、法律の力で希望を取り戻すための支援はできます・・・弁護士だから。」

事務局ブログ/長男の卒業式

昨日は、長男の高校の卒業式がありました。

前日までの春のような陽気が一転し、朝から降った冷たい雨が雪に変わるという悪天候に見舞われましたが、体育館の窓から見える雪景色は、後になって良い思い出として心に残ることでしょう。

 

最後の挨拶の中で先生が、「小・中学校の卒業式とは違い高校の卒業式では、保護者の方々は子供が離れていくということをより実感しているのではないかと思います。」とおっしゃいました。

その言葉を聞き、保護者の中には大きく頷く姿や、涙を流す姿が多く見られました。もちろん私も、その瞬間に涙を流した一人です。

 

卒業後、大学進学のため長男は家を出ることになります。引っ越しの準備や入学手続きなど、慌ただしい日々が続く中で、なんとなく物寂しさを感じています。

今更ながら、母親とはこんな気持ちになるものだと、複雑な思いを抱きながら過ごす毎日です。

 

卒業式が終わり子育ても一区切りがつきました。親としてサポートする場面が今後もあるかもしれませんが、長男の新たな人生の始まりを陰ながら見守ろうと思います。

法律コラム/グローバル犯罪?

先週、オリンピックメダリストが賭博罪で罰金の命令を受けたというニュースがありました。

インターネットの普及で海外の人々と容易に交流できるようになった一方、法律は国ごとにさまざまですので、同じwebサイトで一緒に賭け事をしていても、ある国の人にとっては犯罪となり、ある国の人にとっては犯罪でないということが起こりえます。

インターネットで海外のwebサイトにアクセスする場合、賭け事に限らず、運営する側にとっては合法的なサイトであっても、利用者にとっては犯罪になってしまうかもしれない、ということは気を付ける必要があります。

 

ところで、例えばラスベガスやマカオのカジノに実際に行って賭博をしても、処罰されるこという例は聞きません。これはなぜでしょうか。

法律的には、①国内犯に当たるかと、②国外犯処罰規定の二つの観点から見ていく必要があります。

 

刑法の第1条には、「この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。」と書かれていますので、まずは「日本国内において」というのがどういうことかが問題となります。

裁判所は、刑法などに書かれた犯罪の要件の一部でも日本で発生すれば「日本国内において罪を犯した」と言えると考えています。

例えばこんな事件があります。

Aが友人のB、妹のC、その愛人Dなどと共に台湾の台北に滞在していたところ、ある時DがBに対して覚醒剤が欲しいと頼んだ。Bは高雄から台北まで覚醒剤を買いにいくことにし、Aはこれに同行し、同中で覚醒剤を手にしたこともあった。

Bは台北でDに覚醒剤を手渡し、Dは覚醒剤を日本に輸入した。

この事例では、Aは台湾でしか覚醒剤に関わっておらず、一見すると「日本国内において罪を犯した」場合に当たらないように見えます。しかし、実際にこの覚醒剤が日本に輸入された以上、それを助けたAも「日本国内において罪を犯した」ものとして、国内犯として扱うことにしました。

また、こんな事件もあります。

貿易会社に勤めていたEは、ドイツ籍の船「ゴーベン号」に発火しやすい油紙を積み込んだが、積み荷の種類を運航業者に伝えなかった。船が香港沖に差し掛かったところ、油紙は発火し、火事が起きた

こちらは逆に、火事が起きたのはドイツ扱いの船内でした。この場合も、Eがミスをしたのが日本国内である以上、「日本国内において罪を犯した」ものとして、国内犯として扱われます。

このように、「日本国内において罪を犯した」とは、犯罪に当たる行為か結果の一部でも日本国内で発生していればよいので、かなり幅広く認められます。

このためもちろん、海外のwebサイトにアクセスして賭博をする行為も国内犯になりますが、一方で外国に行って賭博をする分には、「国内犯」とは認められることは考えにくいと言えます。

 

次に、刑法の2条から4条にかけて、外国で犯罪を行った場合でも処罰されるものが指定されています。例えば、日本人が放火や誘拐などの犯罪を外国で行った場合、日本でも処罰されることがありますし(3条)、日本人が外国で強盗や殺人などの被害に遭った場合、日本で処罰されることもあります(3条の2)。

しかしながら、賭博罪についてはこれらの条文に含まれていないので、国内犯でない限り、賭博罪として処罰されることはありません。

 

このようなルールによって、オンラインカジノは処罰され、実際に海外のカジノで賭博することは処罰されないということになります。

賭博したことに変わりはないじゃないかとも思われますが、最高裁判所としては賭博は

単なる偶然の事情に因り財物の獲得を僥倖せんと相争うがごときは、国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害する

らしいので、要するに日本国内で賭博が流行らなければいいという立場なのかもしれません。

 

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