債務整理を行える人間は基本的には3人だけになります。それは、弁護士・司法書士・自分のいずれかになります。まずは他人に依頼する場合を見てみましょう。
弁護士
弁護士は、示談や訴訟のプロです。ありとあらゆる交渉問題について幅広い知識を有すると共に、広い業務範囲をカバーしております。(無論、人によって強い分野・弱い分野は存在します。)よって、司法書士法が改正されるまでは、債務整理は弁護士の生業の業務でした。
司法書士
平成15年4月1日より施行された改正司法書士法の第3条により追加された司法書士の定義は「所定の研修を受け法務大臣の認定を得た上で簡易裁判所における民事訴訟・和解・支払督促等の手続につき依頼者を代理することなどを業とする者」と定められております。この所定の研修を受け法務大臣の認可を受けた司法書士を認定司法書士と呼びます。この簡易裁判所訴訟代理権の付与により、司法書士は訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件につき代理権を有します。つまり、債権者との訴訟価額が140万を超えない場合は、司法書士にも債務整理に関する代行業務を行えます。
弁護士と司法書士における債務整理の相違点は、140万円以上の過払い金があったかどうかが一番問題となるところです。簡易裁判所における訴訟額の限界は140万円です。つまり、認定司法書士では140万円を超えると訴訟手続ができなくなります。140万円を超えた場合は地方裁判所に訴えなければなりません。そうなると代理権を有しているのは、弁護士のみとなります。しかも日弁連法的サービス対策本部によれば、140万円以下か否かは債権者ごとに判断するのではなく,すべての債権者の総債権額で判断されるとされています。(日司連は1業者あたりの請求額が140万円以内としていますが、判例によれば日弁連の主張する説が有力です。)もちろん、請求額が140万円を超えるかなんて、債務者にはすぐにわかりません。よって相談するのであればまずは、弁護士に相談するのが適当でしょう。140万円を超えてくれば、地方裁判所の管轄となり貸金業者もいやでも弁護士に依頼を求めなければなりません。しかし、裁判は金も時間もかかるから起こしたくないと思うのが普通です。貸金業者も簡易裁判所での裁判はいくらでも行くが、地方裁判所になったら弱気になる業者も少なくありません。弁護士は仮に一人の債務者の請求金額が140万円に満たない場合でも、他の債務者と団体で訴訟したり、自らの弁護士費用を請求金額に乗せて140万円を超えるようにして示談を促すテクニックを使うことができます。
また、自己破産や民事再生は地方裁判所に申立てを行うことになります。もしこの業務を司法書士に依頼した場合、司法書士には地方裁判所にたつ権利はありませんので、書類作成の代行のみとなり申立ては自分自身で行うことになります。弁護士はこれらの手続にも代理人として出廷することが可能です。また、これらの手続には審尋と呼ばれる裁判官との口頭面談がある場合があります。この審尋が行われると債務者本人では答えられない質問が出てくる場合があります。やはりこの場面を見ても、弁護士に依頼をするのがベターといえるでしょう。
もちろん、司法書士における債務整理にメリットがないわけではありません。少額の訴訟であれば、弁護士よりも司法書士に依頼するほうが平均的に見れば費用を抑えられるケースが多いようです。
次に弁護士や司法書士に依頼せずに自ら債務整理を行う特定調停という手続があります。これは裁判所が選ぶ調停委員が債務者と債権者の言い分を聞きながら、話し合いで解決を目指す制度です。裁判所を使った任意整理の手法とも呼べるでしょう。この手続のメリットは、第一に貸金業者からの取立てが止まること、第二に利息制限法における引直し計算をすることができるため債務額が減額できることになります。この制度は平成12年2月17日より施行されている特定調停法により発足し、返済困難に陥っている多重債務者にとっては、それまでの民事調停よりも調停制度が格段に利用しやすくなっている為、現在では多重債務者の調停の大半は、特定調停で行われています。(2011年における特定調停の申立件数は、11,351件)