1 鹿児島県警は、令和6年5月13日、女子トイレで盗撮したとして枕崎署地域課の巡査部長を逮捕した。一方、同月31日、鹿児島県警の前生活安全部長が内部文書を第三者に漏らしたとして、国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで逮捕された。前生安部長が福岡のネットメディアに前記巡査部長の容疑を含む内部文書を漏らしたことが守秘義務違反だというのである。
2 これに対し、逮捕された前生安部長は勾留理由開示手続きにおいて、県警トップに位置する現県警本部長に指揮を求めたところ、本部長は『最後のチャンスをやろう』『泳がせよう』と言って前記巡査部長の犯罪行為を隠蔽したと陳述したのである。
3 1の問題点は、前生安部長のメディアへの通報(文書送付)が内部通報として免責(犯罪とはならないこと)されるのかどうかということである。警察という組織の中で上司に改善を求めても聞き入れてもらえる可能性が乏しいということであれば、第三者に通報する方法で組織の改善を求めてよいとする公益通報保護法という法律がある。
ただし、新聞報道によれば、国家公務員法違反について、起訴されたということなので、今後、公益通報の成否が争われることになろう。
4 2の問題点は、犯罪を犯したのに犯人が組織の一員である巡査部長であるからといって手心を加えたり、世間に隠していいのかという問題である。
5 いずれも、まだ事実が判明しているわけではないが、二つ指摘したい。一つは、性犯罪者の更生は極めて困難であるというのは、世間の認めるところではないのか(だから、日本版DBS法もできたのでは)。二つ目に、通報(密告?)を裏付けるためにメディアに捜索差押をするという行為は、報道の自由の侵害ではないか、裁判官は、捜索差押令状発布に当たり、この点どう考えていたのか、不可解な事件である。