弁護士の尾畑です。気温が急に下がってきて、先日あわてて衣替えをしました。
この時期は体調も崩しやすいので、気をつけたいところです。
さて、今回は「慰謝料」について少々お話をしようかと思います。言葉だけはなんとなく知られていますが、法律的な意味をご存じの方は、あまり居ないのではないでしょうか。
この慰謝料、裁判官も使うれっきとした専門用語ですが、例えば民法の中には、「慰謝料」という言葉は使われていません。しかし、一般的には民法第710条が慰謝料請求の根拠とされています。
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。 |
つまり、「財産以外の損害」についての賠償請求が、慰謝料請求となります。
とはいえ、何についても認められるわけではありません。民法は経済的損害の賠償を原則としており、経済的損害の賠償ではどうしても足りないという場合に限り、「財産以外の損害」の発生が認められています。
典型的な事例としては、交通事故による怪我の損害、浮気などによる離婚慰謝料、最近話題になりがちな名誉毀損の問題、親族が死亡したことに伴う遺族の損害など、経済的に計算できない損害が大きいと考えられるものが挙げられます。
一方で、交通事故でも車両の損傷などの物的な損害や、取引上の損害については、あまり「財産以外の損害」の発生は認められていません。物の損傷や、経済活動に伴う損害については、かなりハードルが高いと言えます。
しかしながら、近年法律的には「物」であるペットの死亡について、慰謝料請求が認められた裁判例が増加しているように、事例により結論は異なります。当然に認められるものではないですが、気になる場合には弁護士に相談してみると良いでしょう。