1 前回は、有機農業の問題点について述べたが、遺伝子組換え作物について触れてみたい。
2006年(平成18年)に成立した「有機農業推進法」では、有機農業は「遺伝子組換え技術を利用しないことを基本とする」(第2条)としている。
2 では、日本では遺伝子組み換え作物は栽培できないのか?
否である。トウモロコシやダイズ、西洋ナタネ他149品種(2022年時点)は、栽培が認可されているのであるから、遺伝子組み換え作物として国内でも栽培できるはずである。しかし、実際に遺伝子組み換え作物として日本で商業的に栽培されているのはサントリーが育成した「青いバラ」しかないというのだ。自分の作物が遺伝子組み換え作物と交配したら困るという漠然とした不安や風評被害を懸念し栽培を断念するからだという。
遺伝子組み換え作物は国から認可されているのに、これを有機栽培しても前記のとおり、有機農業にはならないのだ。また、消費者団体等も遺伝子組み換え作物を栽培することに反対しているため、国内では事実上栽培できないのだ。
3 しかし、我々は、日常的に、食用油や醤油、マヨネーズ、マーガリンなどの加工調味料を口にしている。これらの原料は、輸入品の遺伝子組み換えのダイズやナタネ、トウモロコシ、綿実である。
また、我々日本人は、遺伝子組み換え技術でできた食品添加物「キモシン」を用いたチーズを普通に食している。
4 というように、日本人の多くは、遺伝子組み換え食品を不安視し、毛嫌いしながら、実はこれを相当程度摂取しているのだ。
常に常識を疑って考える態度が必要である。
以上は前回同様「誰が農業を殺すのか」(新潮新書)を参考にさせていただいた。