法律コラム/刑事事件と民事事件

最近、刑事事件と民事事件について話す場面があったので、今回のブログは刑事と民事についてお話したいと思います。

 

何か悪いことをしてしまったとき、多くの場合刑事事件と民事事件の双方で問題となります。刑事事件の取扱いは、フランスやドイツなどヨーロッパ大陸系の国と、アメリカを含むイギリスの影響を受けた国、また中東のイスラム法圏の国など、地域によってかなり違います。現在の日本の刑事手続は、憲法の刑事手続に関する規制がアメリカから導入されていることから、英米法の影響が強いとされているので、英米法圏における刑事手続を前提としてご紹介します。

 

刑事裁判と民事裁判の大きな違いは、裁判の当事者です。

刑事裁判は、「悪いこと」が発生したときに生じる、社会に対する損害を追求するものです。たとえば他人を傷つける人を放置すれば、治安が悪くなり、社会の様々な部分に不具合が出てくるので、それを防ぐというのが本質です。このため、刑事裁判を起こすのは、原則として検察庁に所属する公務員である検察官です[1]。英語では検察官のことを「public prosecutor(公共の代理人)」と言います。刑事手続において怪我をした被害者は訴訟の一方当事者ではなく、怪我の重さは犯罪を評価する一要素にすぎません。このため、たとえばわざと人に「けが」を負わせた傷害罪の最高刑が懲役15年に対し、間違って人を「死亡」させてしまった過失致死罪の最高刑は50万円以下の罰金であるなど、被害の重さと罪の重さは必ずしも比例しません。逆に、被害額を上回る罰金刑が科されることもありますし、仮に罰金を払ったとしても損害の賠償は別途行わなければなりません。

たとえば覚醒剤の使用など、直接的な被害者がいない行為が処罰されることがあるのも、社会に対する損害の防止が刑事裁判の本質だからです。

 

一方、民事裁判の目的は、人と人との間の紛争を解決することにあります。

たとえば、誰かから殴られた被害者が、加害者に対して自分自身の治療費などの損害の補填を要求したのに、加害者が払ってくれないとき、加害者と被害者の間に立って、そもそも支払う必要があるかや、支払うべき額を確定するのが、裁判所の仕事になります。

あくまで目的は当事者間の調整なので、刑事裁判とは異なり、被害の大きさが本質的な要素です。

 

このように、刑事裁判と民事裁判では目的が違い、このため一つの出来事について、両方の裁判を行うこともあります。

被害者としては、民事上の損害賠償の請求と、刑事告発のどちらを行うのか、あるいは双方を行うべきか、それぞれの性質を考慮して検討する必要があるでしょう。

[1] 検察審査会の議決による強制起訴など、まれに弁護士が検察官を務めることがあります。

 


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